2006 Fiscal Year Annual Research Report
河川における有機物の起原およびその生物地球化学的機能に関する研究
Project/Area Number |
06J04100
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
関 宰 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際研究者交流 / ロシア:中国:イギリス / アムール川 / オホーツク海 / 有機物 / 海洋生物生産 |
Research Abstract |
河川(特に巨大河川)は陸から海洋への物質の輸送システムとして機能しているが、海洋植物プランクトンの生産に必要な栄養塩である窒素、リン、珪酸や微量栄養塩の鉄の供給により沿岸域の生物生産に多大な影響を及ぼしている。また河川有機物は栄養塩の元となる上に、河川有機物の大部分を占める腐植物質は鉄と錯体を形成することによって鉄の溶解度を高め、いわば鉄の輸送媒体として機能するなど生物地球化学的に重要な役割を果たしている。このような理由から河川流域内における有機物の流出源の解明およびその生物地球化学的諸機能の把握は河川の炭素循環、生物地球化学サイクルの研究における重要課題である。 本年度は最新の分析手法である有機物の水素・酸素安定同位体比の腐植物質研究(腐植物質の起源推定やその生成過程)への適用を目的として国内外の様々な地域(河川、湖、土壌、泥炭)で採取した溶存及び土壌の腐植物質(フミン酸とフルポ酸)30試料の水素・酸素同位体比の測定を行い、起源トレーサーとしての評価を行った。 採取された試料は共同研究者の手によってフルポ酸とフミン酸に分離精製された。その後水分を完全に除去するためにオーブンで一昼夜乾燥させた後、150-200μgを銀カップで包んで、元素分析・熱分解炉・同位体比質量分析計(EA-TC-IRMS)にて水素・酸素同位体比測定を行った。 得られた水素・酸素同位体比はそれぞれ-200 -63‰、-16.7 26.7‰の値を取った。腐植物質の水素同位体比は主に腐植物質の源である植物が利用した水の同位体比と腐植化の過程における様々な化学変化を通した同位体比交換によって調節されていると考えられる。今回の測定で得られたサンプル間における非常に大きな同位体比の違いから、腐植物質の水素同位体比はその起源や腐植化課程を強く反映することが明らかになった。このことから腐植物質の水素同位体比は腐植物質の起源を識別する上で新しい有効な手法であることが示唆された。
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