2008 Fiscal Year Annual Research Report
電子と正孔を空間分離した量子ドットによる量子もつれ合い光子対発生の研究
Project/Area Number |
06J04122
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
定 昌史 Hokkaido University, 電子科学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 国際研究者交流 / オランダ / Type-II / 量子ドット / 単一光子源 / 励起子 / 等電子中心 / 量子リング |
Research Abstract |
今年度は半導体単一光子源の作製・測定において世界トップレベルの技術を有するデルフト工科大学と研究交流を行い,試料加工技術および蛍光測定技術の向上を図った。試料加工について単純な低温エッチングでは表面状態の改善はみられなかったものの,(NH_4)_2S_nを用いた処理によりIII-V族の表面特性が大きく改善されることを見いだした。 つぎに,量子ドットよりも波長再現性に優れる等電子中心を発光センタとして用いることに注目した。ZnSe中のTeは従来よく知られる等電子中心であるがその物性は混晶としての理解に留まっていた。我々は極微量Te単一層構造を採用することにより,励起子-格子相互作用が本質的な働きを示すことを明らかにした。III-V族でのType-IIシステムとしてGaAsSb/GaAs量子構造を作製し光学特性を評価した。その際,Schrodinger方程式とPoisson方程式に加えキャリアのレート方程式を組み合わせた解析手法を確立した。その結果,蛍光エネルギーの励起強度依存性を定量的に評価することが可能となり,従来の定性的解釈が不十分な理解に留まっていたことを明らかにした。また,局在励起子状態に着目することにより,GaAsSb量子井戸において単一準位からの発光を観測することに成功した。励起子分裂をもたらす交換相互作用そのものについて再度理論検討を行った。その結果,量子構造の幾何形状をドットからリングヘと変化させることで分裂幅が最大1桁程度小さくなる可能性を指摘した。これに対応して,単一InAs/GaAs量子リング構造の分光測定を行い,実験系の分解能以下の非常に小さい分裂幅〜2μeVを観測した。この値は励起子寿命から決まる自然幅と同程度の大きさであり,もつれ合い光子対発生の可能性が十分に期待できる。
|