2007 Fiscal Year Annual Research Report
タンガニイカ湖産魚類における協同繁殖と多様な繁殖戦術に関する研究
Project/Area Number |
06J04137
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安房田 智司 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 協同繁殖 / カワスズメ科魚類 / タンガニイカ湖 / 繁殖戦術 / ヘルパー / Julidochromis / 協力 / 対立 |
Research Abstract |
魚類の協同繁殖と代替繁殖戦術の進化を明らかにする目的で、アフリカ東部のタンガニイカ湖でカワスズメ科魚類の野外調査を行い、主に以下の3点の研究成果が得られた。1)Julidochromis ornatusは繁殖ペア以外に、繁殖ペアと非血縁のヘルパーが対捕食者防衛などの子育てを手伝う協同繁殖システムを持つ。ヘルパーがいることによる繁殖ペアの利益を明らかにするため、ヘルパーの除去実験を行った。その結果、除去前と除去後で繁殖ペアの行動に大きな違いは認められなかったが、除去後に保護されている仔魚が減少するという結果が得られた。この結果はヘルパーの保護行動が実際に仔魚の生存率を増加させることを示す。2)J. ornatusは保護されている仔魚とヘルパーの体サイズがグループによっては連続的であり、仔魚なのかヘルパーなのか区別できない場合がある。保護をする個体としない個体の特徴を明らかにするために、巣内にいる様々な体サイズの個体の行動と成熟度合いを調べた。その結果、対捕食者防衛を行っている個体は必ず成熟していたが、未成熟個体は摂餌のみを行っていた。このことより、本種は繁殖に参加する成熟個体のみがヘルパーであることが明らかになった。3)Julidochromis属は5種からなるが、J. ornatus以外の種での社会構造はほとんど分かっていない。そのうちの3種J. marlieri, J. regani, J. dickfeldiについて野外観察と採集を行った。その結果、3種に共通して、グループ内でメスが最大であること、ヘルパーはオスのみで全て発達した精巣を持つ成熟個体であること、ヘルパーは巣あたり0-2個体であること、が分かった。これらの結果から、オスヘルパーはグループ内で繁殖参加している可能性が高く、今後採集を行ったサンプルについて親子判定を行う。
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