2007 Fiscal Year Annual Research Report
フラビウイルス(ウエストナイルウイルス)によるウイルス脳炎の分子病態解析
Project/Area Number |
06J04147
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 忠樹 Hokkaido University, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特別研究員(PD)
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Keywords | フラビウイルス / ウエストナイルウイルス / ウイルス粒子形成機構 / ウイルス粒子放出機構 / 分子生物学 / ウイルス学 |
Research Abstract |
ウエストナイルウイルスはフラビウイルス科、フラビウイルス属に属するウイルスであり、日本脳炎ウイルスやデングウイルスと同族である。本研究では、分子生物学的手法を用いたウイルス病原性の分子機構解析により、ウエストナイルウイルス感染症の予防法と治療法の新たな標的を探索することを目指す。 1、ウイルス粒子形成解析のための蛍光プローブ作成: 昨年度に引き続きウイルス粒子形成解析のための蛍光プローブ作りを行った。粒子を形成する主要なウイルスタンパク質であるEタンパク質に蛍光タンパク質を融合したプローブを20種類ほど作成したが、いずれも野生型と同様の粒子形成能を有するものは得られなかった。そこで、ウイルス粒子形成に関わるもう一つのウイルスタンパク質であるprMに注目し、プローブの作成を行った。ウイルス粒子が成熟する過程において、prMが宿主因子であるfurinにより切断されることが重要であるということが言われているが、その切断をFRETによりモニタリングするプローブを作成した。これにより、prMが細胞内のどの部位で切断されウイルス粒子の成熟が起こるかを検出することが可能でとなった。今後、FRETシグナルを検出できる蛍光顕微鏡を用いて詳細な解析を進めていく予定である。さらに、ウイルス粒子形成過程において、prMとEタンパク質の相互作用が重要であるとされているので、この2つの分子の相互作用を検出する蛍光プローブを作成し細胞内小器官とウイルス粒子形成との関係性を明らかにしていくことも計画している。 2、ウイルス粒子放出に関わる宿主因子の同定 フラブウイルスのウイルス粒子は、小胞体の膜上で出芽し、細胞に内在する分泌経路によって細胞外へ放出されるとされている。細胞は、様々な小胞輸送経路を持っていることが最近の研究により明らかになってきているが、この研究ではフラビウイルス粒子がどのような細胞内輸送経路を利用しているかを決定することを目的としている。これらの経路を同定するためにウイルス偽粒子を安定的に発現する細胞株を樹立し、その細胞と小胞輸送に関わる分子のsiRNAライブラリーを用いてフラビウイルス粒子の放出に関わる宿主因子の同定を試みている。スクリーニングの方法は、フラビウイルスのEタンパク質を認識する抗体を用いたSandwich ELISAを用いている。現在までに約100個の宿主因子についてスクリーニングしたが、今後、さらに800個程度の宿主因子についてスクリーニングを行うことを計画している。
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