2006 Fiscal Year Annual Research Report
心と文化の相互生成関係の実験研究:制度論的観点からのアプローチ
Project/Area Number |
06J04164
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 知里 北海道大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 制度論的アプローチ / 社会的秩序問題 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで心理学の研究の中で蓄積されてきた「心の文化差」を、特定の心の性質を共有する人々が生み出す行動と、その行動の集積として個人の前に立ち現れる誘因構造(制度)を媒介として、社会的ニッチを構築することで自己維持的に存在していることを示すことにある。本研究では、人間にとって最も重要かつ根源的な適応課題である、社会的秩序問題をめぐる制度を分析の対象とする。具体的には、社会的秩序問題の解決のために人々が共通に採用する信念体系と、それにより生み出される誘因構造の差が、集団主義と個人主義の制度の差であると考え、それぞれの制度を構成する信念体系と誘因構造のいずれかを操作することで、もう一方がそれに対応して変化するかどうかを検討する。本年度は、まず閉鎖的集団内で共有された評判情報にもとづく成員の集団からの排除(村八分)を誘因構造の操作に用いて、集団主義的制度の下で心理尺度がそれに沿った形で変化することを実験室実験によって示した。この結果は現在、国内の学術雑誌に投稿中である。また、これまでは東アジア人の集団主義社会として一括りにされてきたが、東アジア内における制度の相違を実証的に確認しておくことが必要であると考え、日本、中国、台湾の3力国を対象として、それぞれの社会における集団の持つ意味を検討するため、実験室実験を行った。この実験研究の結果は、国内における学会、国際シンポジウムでの発表をすでに行っている。また、来年度行われる国際学会(アジア社会心理学会)のシンポジウムで報告する予定である。来年度は、本年度収集した実証的知見をまとめ理論的検討を進め、博士論文を執筆する予定である。
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