Research Abstract |
本研究の目的は,動脈の硬さと精神的ストレス負荷時に誘発される血行力学的反応パターン(心臓優位vs.血管優位)の関係を明らかにすることである。そのため,先ずは,18人の女子大学生(平均18.4±0.5歳)を対象として,安静時の動脈の硬さ(PWV)と暗算課題遂行時の心臓血管系反応を測定し,各指標の変化(Δ)値を算出した。その結果,安静時のPWV値と血行力学的プロフィール(r=.-66,p<.01),血圧補償不足度(r=.-55,p<.05),Δ拡張期血圧(r=.-55,p<.05),Δ全末梢抵抗(r=.61,p<.01)との間には有意な直線相関関係が,さらに,Δ平均血圧(r=.43,p<.10),Δ1回拍出量(r=.-43,p<.10)との間には有意傾向の直線相関関係が認められた。続いて,24人の男子大学生(平均21.1±1.4歳)を対象として,暗算課題と鏡映描写課題を実施し,先と同様の指標を算出した。その結果,暗算課題では,安静時のPWV値とΔ圧受容体反射感度(r=.-43,p<.05),Δ心拍数(r=.44,p<.05)との間には有意な直線相関関係が,さらに,Δ前駆出期(r=.-62,p<.01)との間には有意傾向の直線相関関係が認められた。また,鏡映描写課題では,PWV値とΔ圧受容体反射感度(r=.-62,p<.01),Δ心拍数(r=.-64,p<.001),Δ前駆出期(r=.-47,p<.05)との間に有意な直線相関関係が認められた。従って,これら2つの実験より,動脈が硬い(軟らかい)者ほど強い心臓(血管)優位反応パターン者である,という関係性が明らかとなった。
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