2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリcagA遺伝子導入マウスを用いた胃発癌機構の解析
Project/Area Number |
06J04205
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大西 なおみ 北海道大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / CagA / 遺伝子導入マウス |
Research Abstract |
ヘリコバクター・ピロリ病原因子CagA蛋白質は胃癌を始めとした種々の胃粘膜病変発症に深く関与する。しかしながらin vitro実験系によるCagAの機能解明が進む一方、個体レベルにおけるCagAの胃粘膜病変発症への寄与に関しては未だ検証されていない。本研究は、CagA蛋白質を胃上皮に発現するcagA遺伝子導入マウスを作製し、CagAによる胃癌発症のプロセスを分子病理学的に追跡することにより、生体内におけるCagAの病原性・発癌への関与を解明しようとするものである。昨年度既にcagA遺伝子導入マウスのライン化を完了しており、本年度はその胃上皮を中心にCagA発現が個体の組織分化・病態発症に及ぼす影響について解析を進めた。 1.cagA遺伝子導入マウス胃粘膜組織の病理学的解析 マウス胃粘膜におけるCagAの構成的発現は胃上皮細胞の増殖能:亢進効果を示し、その結果、胃粘膜厚が著しく増加することを見出した。このことは、CagAがマウス胃上皮細胞の細胞増殖機構に何らかの影響を及ぼすことを示唆している。 2.リン酸化耐性型cagA Tgマウスの作製 CagAは細胞内に侵入後チロシンリン酸化修飾を受けることが知られていることから、CagAのチロシンリン酸化はCagAの病原活性発揮のために重要な役割を担う分子修飾であると考えられる。そこでcagA遺伝子導入マウスで認められる胃粘膜細胞の増殖能亢進がCagAのチロシンリン酸化に依存した表現型か否かを調べるために、CagAのチロシンリン酸化部位であるチロシン残基をフェニルアラニン残基に置換したリン酸化耐性型CagAを胃「上皮に発現する"リン酸化耐性型cagA遺伝子導入マウス"を作製した。現在までにそのライン化を終えており、今後cagA遺伝子導入マウスと同様の手法により表現型を解析する予定である。
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