2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J04218
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 格 北海道大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 場の量子論 / スペクトル解析 / シュレーディンガー作用素 / ディラック作用素 / 量子電磁力学 |
Research Abstract |
本年度の私の研究目標は,粒子と量子場が相互作用する系のスペクトル(主に固有値の存在)を解析する事であった。 主に以下の2つの模型を研究した。 (1)Dirac作用素で記述される相対論的な電子と量子電磁場の相互作用を記述する系:Dirac-Maxwell模型, (2)N個の量子的な非相対論的粒子がスカラー量子ボース場と相互作用する系:N体Nelson模型。 (1)Dirac-Maxwell模型のハミルトニアンは外カポテンシャルを持たない場合は運動量ごとに分解することができる。 私は2005年に運動量を固定したDirac-Maxwell模型のハミルトニアンはすべての定数について下に有界な自己共役作用素であるということを証明していたが,本年度の研究において,低エネルギーの光と電子の相互作用を弱くする条件(赤外正則化)のもとでそのハミルトニアンは基底状態を持つことを証明することができた。これは赤外正則化のもとでDirac作用素で記述される電子のまわりに光がまとわりついている定常状態が存在するということを保証するものである。さらに,私は量子電磁場における一般的な角運動量を定義しDirac-Maxwell模型の任意の固有値は2重以上に縮退していることを示すことができた。 (2)N体Nelson模型に関する研究は廣島文生氏(九州大学)との共同研究である。 我々はN個の量子力学的粒子が非常に弱い引力ポテンシャルの中を運動し,さらに量子ボース場と相互作用する系を研究した。 外力ポテンシャルは非常に弱いのでそれぞれの粒子は単体のときはポテンシャルに束縛されない,しかし量子場との相互作用が強くなるとN体Nelsonモデルには基底状態が現れる現象を見いだした。 これはボース場を介しての粒子間の有効ポテンシャルが系のスペクトルに具体的に影響を及ぼすことを示唆しており,束縛強化の問題の新しい視点を与えている。
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