2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J04240
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前川 泰則 北海道大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 非線形偏微分方程式 / 流体力学 / Naier-Stokes方程式 / 輸送項付き熱方程式 / 基本解 / 自由境界問題 |
Research Abstract |
流体力学などで現れる非線形偏微分方程式の解をより精密に調べるため、その方程式を線形化したときに現れる発散形2階放物型線形偏微分作用素の基本解について研究した。基本解はその偏微分作用素の構造を豊富に内包しており、解の性質を本質的に捉えているので、この基本解を調べることはきわめて重要である。本研究では、考えている方程式の基本解に対して、下からのGauss型各点評価を得ることに成功した。すでに上からのGauss型各点評価は知られており、この研究によって、解のより精密な挙動を知ることができる。さらに、この各点評価の応用として、従来では証明することが困難であったある種の輸送項付き線形熱方程式の解の存在と一意性を証明できるようになった。これらの結果をまとめた論文はすでに雑誌Archive for Rational Mechanics and Analysisに受理されており、近く掲載される予定である。 また、二層流体問題を背景とした、ある自由境界問題の初期値問題に取り組んだ。自由境界問題では、境界の動き方も未知であることから強い非線形性が生じる。本研究では、この非線形性による境界の滑らかさに関する困難を緩和するために数値計算でしばしば用いられる近似方程式の初期値問題に取り組んだ。そして、少なくとも時間局所的にはこの初期値問題の解の存在と一意性を示すことができた。この結果は近似方程式そのものの数学的な妥当性を示すものである。これらをまとめた論文は現在投稿中である。 さらに、北海道大学の寺澤祐高氏との共同研究で局所一様L^p空間におけるNavier-Stokes方程式の初期値問題に取り組んだ。その結果、時間局所的に一意な解が存在することが証明され、この結果はDifferential Integral Equations,2006に掲載された。 最後に、9月から12月にかけて、ニューヨーク大学のクーラン研究所のRobert V. Kohn教授のもとに滞在した。そこでは、著名な数学者をはじめ、若手研究者と交流することができ、研究者として非常に有意義な時間を過ごすことができた。
|
Research Products
(1 results)