2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J04240
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前川 泰則 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非線形偏微分方程式 / 流体力学 / 相転移現象 / Stokes方程式 / 平均曲率流方程式 / 自由境界問題 |
Research Abstract |
物質の相転移を記述する方程式はこれまで多くの研究者によって調べられている。中でも、平均曲率流方程式は、その代表的な方程式である。近年、物理的要請から、この相転移現象が流体の輸送による影響を受ける場合が注目され、主に数値計算の立場から研究されている(T. Blesgen; J. Phys. D: Appl. Phys. 32, 1999., C. Liu and J. Shen; Phys. D 179, no. 3-4, 2003.など)。私は相転移を記述する平均曲率流方程式と流体の運動を記述するStokes方程式とが組み合わさった非線形偏微分方程式の研究を行った。この問題は表面張力の考慮された自由境界問題として定式化され、極めて非線形性の強い方程式となっている。なお、この方程式は非圧縮性粘性流体に対する二層流体問題を近似する方程式とも捉えることがてきる。この方程式に対する従来の研究では数値計算によるものが中心であり、弱解を念頭におきつつも数学的には形式的なアプローチが多かった。そのため流体の速度場、あるいは界面(自由境界)の滑らかさや一意性について厳密にはよくわかっていなかった。そこで方程式の数学的適切性を調べるため、対応する積分方程式を考え、その解を構成するアプローチをとった。ここで難しい点は自由境界条件のため速度場が自由境界付近で連続的微分可能でないことである。この速度場の滑らかさの損失は、輸送項付き平均曲率流方程式を解く上で深刻な困難を引き起こす。そこで積分方程式の詳細な解析により、流体の速度場の自由境界に沿った方向での滑らかさを導いた。これによって輸送項付き平均曲率流方程式を解くことが可能になり、時間局所的ではあるが自由境界の滑らかさが保証された一意的な解を構成することに成功した。積分方程式による定式化と、境界に沿った速度場の滑らかさを導き、特殊な縮小写像を考えることで解を構成している点がこの研究において最も独創的な点である。
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Research Products
(15 results)