2007 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ乳腺組織構築に対する脂肪細胞由来分泌因子の役割
Project/Area Number |
06J04368
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山地 大介 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 乳腺上皮細胞 / 脂肪細胞 / HGF / 肥満 / 三次元培養 / NK4 / 馴化培地 / 上皮間質相互作用 |
Research Abstract |
乳腺の組織構築は全身性のホルモンによって制御される一方、組織局所の間質細胞によっても支持される。間質脂肪細胞は、単にエネルギーを貯蔵するだけでなくアディポサイトカインと称される様々な生理活性物質を産生して生体機能を調節する内分泌細胞として位置づけられる。しかし、脂肪細胞由来分泌因子が乳腺上皮細胞の形態形成にどのように関与するのか、特に反芻類における役割は不明であった。 そこでこの点を明らかにするために、ウシ乳腺上皮細胞(BMEC)を分離し、分化前後のウシおよびマウス脂肪細胞馴化培地がBMECの形態形成に及ぼす影響を三次元培養法で調べた。分化前のウシ前駆脂肪細胞馴化培地(FCM)はBMECに対して影響を及さなかったが、分化後の成熟脂肪細胞馴化培地(ACM)はBMECの導管および腺房様構造の形成を誘導した。一方、マウス3T3-L1脂肪細胞株のFCMはBMECの導管様構造の形成を誘導したが、3T3-L1 ACMは形態形成作用を示さなかった。肝細胞増殖因子(HGF)アンタゴニストであるNK4をウシACMまたはマウスFCMに添加すると、これらの馴化培地によるBMECの形態形成が抑制され、逆にリコンビナントヒトHGFはBMECの導管形成を誘導した。さらに、これらの馴化培地中からHGFタンパク質が検出された。そこで、in vitroにおいて脂肪細胞におけるHGF mRNAの発現を検討したところ、HGF mRNAはウシ前駆脂肪細胞ではほとんど検出されなかったが、成熟脂肪細胞へと分化させると、その発現量は有意に増加した。一方、マウス脂肪細胞では、HGF mRNAは分化前の細胞に強く発現しており、成熟脂肪細胞へと分化させると消失した。 以上の結果より、脂肪細胞由来分泌因子による乳腺上皮細胞形態形成がHGFを介しており、ウシにはマウスとは異なる独特の乳腺上皮-脂肪細胞相互作用が存在することが示唆された。
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Research Products
(3 results)