2006 Fiscal Year Annual Research Report
ミジンコにおいて捕食者に誘導される表現型多型の発生制御に関する研究
Project/Area Number |
06J04380
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今井 眞木 北海道大学, 大学院環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 表現型多型 / 表現型可塑性 / Daphnia / 防御形態 / 胚発生 / 形態形成 / ケミカルコミュニケーション / 食物連鎖 |
Research Abstract |
本研究では、ミジンコにおいて捕食者に誘導される表現型多型の発生制御機構を明らかにすることを目的として、環境シグナルを受けた個体の形態形成に至る発生学的過程を詳細に解析する。特に、形態誘導の分子発生機構の解明に主眼を置く。 これまでの研究で、環境シグナル(捕食者カイロモン)を受けた個体の形態形成に至る発生学的過程を詳細に解析した。防御形態の形成時期をより詳細に特定するため、胚発生過程を観察した。ネックティースは育房を出て1,2,3齢で形成された。ネックティース基部には、クレストが形成されている。クレスト形成に際しては、2,3齢胚で後頭部の細胞層を肥厚させていることが分かった。観察された胚発生過程での3回の脱皮を介してカイロモンを感受し、形態形成を開始していると考えられる。胚発生、後胚発生過程においてはカイロモン曝露個体でいずれも体サイズが減少していた。また抱卵数の低下も見られた。これは、防御形態の形成に対するコストであると考えられる。 これらの詳細な観察結果から現在、発生学的差異の生じると考えられる胚後期から1齢期にかけての個体を用いて、これらの時期に特異的に発現する遺伝子発現を、Differential display法を用いて比較し、防御形態特異的遺伝子の同定を行っている。Differential displayによって全部で613のcDNAバンドが確認できた。このうち防御形態形成個体で発現量が上昇しているのは104、発現が抑制されているのは109であった。発現量の上昇・抑制を含む防御形態形成個体に特異的ないくつかのバンドを確認した。 今後、特異的に発現する遺伝子をDifferential Display法を用いて比較、遺伝子の特定していく。Real-time定量PCRで発現量の変化を調べ、in situハイブリダイゼーションで発現部位を特定する。
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