2006 Fiscal Year Annual Research Report
極低温星間塵表面反応による星間分子の水素同位体分別機構
Project/Area Number |
06J04387
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長岡 明宏 北海道大学, 大学院環境科学院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 分子雲 / 星間塵 / 星間分子 / 水素同位体分別 / メタノール / アモルファス氷 / 表面反応 / トンネル反応 |
Research Abstract |
本年度の研究実施計画の通りに研究を行った.星間塵表面を模擬した極低温固体表面における,メタノール重水素置換体の生成速度およびその表面温度・組成依存性の測定に成功した.CH_3OH固体を真空中で作成し,低温重水素(D)原子(100K)を照射した.化学組成の変化をFTIRでその場測定した.実験の結果,10Kの固体表面上でメタノール分子のメチル基中のHとD原子の置換反応(1)が進むことがわかった. k_1 k_2 k_3 CH_3OH→CH_2DOH→CHD_2OH→CD_3OH(1). 反応(1)の各反応ステップの実効的な反応速度はそれぞれk_1=8.5±1.1×10^<-3>,k_2=5.9±0.57×10^<-3>,k_3=4.4±1.0×10^<-3>s^<-1>であることがわかった.k_1-k_3の反応速度比はk_2/k_1=0.69±1.1,k_3/k_1=0.52±0.14となり,これらの差はメチル基からのH原子引き抜き反応(CH_3OH+D→CH_2OH+HD, CH_2DOH+D→CHDOH+HD, CHD_2OH+D→CD_2OH+HD)の同位体効果に起因すると考えられる.以上の成果はJ. Phys. Chem. Aに掲載された(6.研究発表(1)-(3)). 試料温度および組成依存性についてはk_1のみ測定を完了した.CH_3OH固体表面におけるk_1は,20K:6.0×10^<-3>s^<-1>,25K:1.0×10^<-3>s^<-1>,30K:〜1×10^<-4>s^<-1>となり,表面温度が高くなるにつれて反応速度が小さくなった.温度上昇にともなう表面へのD原子付着係数の低下により,速度が小さくなると考えられる.アモルファスH_2O氷表面にCH_3OHを蒸着した場合,10Kにおけるk1はCH3OH固体とほぼ等しいが,30KではCH_3OH固体より1桁大きくなった.下地としてH_2O氷が存在する場合では,D原子付着係数が30KにおいてもCH_3OH固体ほどは低下しないと考えられる.以上から,星間分子雲において,星間塵を覆っている氷マントルの温度・組成の違いにより,メタノール重水素体の生成速度が大きく異なることが示唆され,下地としてH_2O氷が存在する場合では,40K程度までメタノール重水素体が塵表面で効率的に生成されると期待される.
|
Research Products
(2 results)