2006 Fiscal Year Annual Research Report
海水中硝酸の酸素同位体異常定量法開発と海洋窒素循環系への応用
Project/Area Number |
06J04415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 慎介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 三酸素同位体 / 硝酸 / 海洋窒素循環 / 水素ガス / 安定同位体 |
Research Abstract |
硝酸の三酸素安定同位体組成定最にあたって重要であるO_2分子と他の各軽元素分子種の分離・精製のための自作ガスクロマトグラフラインの構築と測定諸条件の検討実験を行った。この実験により、混合気体中からのH_2、O_2、N_2の各軽元素分子の精製・分離に成功した。今後はO_2の三酸素同位体定量精度の検討を行い、硝酸の酸素同位体異常定量に十分な精度を得るべく、ここまでに構築した自作ガスクロマトグラフラインの調整を行う予定である。 一方、上記O_2分離法の開発に付随して分離することに成功したH_2の海水中での挙動の定量は、窒素固定の定量的評価の一助となる可能性を持つ。窒素固定は、酸素同位体異常を持つ大気沈着由来の硝酸とともに海洋表層への重要な新窒素流入源であるため、海洋窒素循環系を定量的に評価するためには定量すべき過程である。本研究では海水中のH_2の濃度と水素同位体組成(δD)を定量する手法を構築した。本研究でのキャリアガス中でH_2の精製を行う過程は、これまでに報告されたことの無い新たな手法である。構築したδD定量法を評価するため、海洋研究所の所蔵している海底熱水試料中のH_2の濃度およびδDを定量し、概ね既往研究と調和的な結果を得た。次年度以降は、海水中のH2濃度とδDを定量し、窒素固定量の定量への応用の可能性を評価する予定である。 本研究では安定同位体組成定量法の開発と並行して、表層海水・深層海水の試料採取を行った。KH06-2次航海において西部太平洋海域の海水試料の鉛直採取を行った。また、海洋表層の窒素循環に影響を与うる大気中の物質組成を調べるため、大気試料の採取も同時に行った。8月中旬に行われたKT06-18次航海では、窒素固定旦評価のために、表層海水20Lから溶存H_2を抽出し海洋研究所へと持ち帰り、またKH06-4次航海では、海水10Lから溶存ガスを抽出し、海洋研究所へと持ち帰った。
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