2007 Fiscal Year Annual Research Report
分子内トリアリールメタン-トリアリールメチリウム錯体の三中心結合:その構造と物性
Project/Area Number |
06J04425
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武田 貴志 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カルボカチオン / 三中心結合 / X線構造解析 / 温度可変NMR / 電荷移動相互作用 / 長い結合 |
Research Abstract |
昨年度は、[C-H-C]+型の三中心結合の単離を目指し、ナフタレンの1,8-ジイル骨格に組み込まれた分子内トリアリールメタン-トリアリールメチリウム錯体の合成、単離に成功した。このものは近接位にC-H接触を有するカルボカチオンとしては初めての単離例となった。これらのカチオンは固相、溶液中ともに局在化した構造であった一方で、溶液中においては分子内で1,5-ヒドリドシフトを示すということが確かめられた。本年度は、このカチオンの非局在化に対するアリレンスペーサーの影響を調べる目的で、母骨格となるナフタレンをさまざまな骨格に組み替えたカチオンを合成した。用いた母骨格としては、C-H・・・C+部位の距離や角度を考慮し、アセナフテン-5,6-ジイル、アセナフチレン-5,6-ジイル、アセナフチレン-1,2-ジイル、ベンゼン-1,2-ジイル、ビフェニル-2,2'-ジイル骨格を選択し10-メチルアクリダンと10-メチルアクリジニウムを組み込んだカチオンを合成、単離した。X線構造解析の結果、ベンゼンとアセナフチレン-1,2位に組み込まれたカチオンは水素が外側を向いた構造をとっていたが、その他のカチオンではC-H・・・C+型のカチオンとなっていることが確かめられた。温度可変NMRスペクトル測定によってこれらのC-H・・・C+型カチオンでは1,5-ヒドリドシフトが観測され、その活性化障壁はC・・・C+部位が遠くなるほど、またC-H・・・C+部位がねじれるほど大きくなることが確かめられた。ヒドリドシフトの遷移状態においては三中心結合の状態を取っていることが予想されることから、[C-H-C]+型の三中心結合の単離には、よりC-H部位をカルボカチオンに平面的に近づけることで得られるということが示唆された。
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Research Products
(4 results)