2006 Fiscal Year Annual Research Report
分子内トリアリールメタン-トリアリールメチリウム錯体の三中心結合:その構造と物性
Project/Area Number |
06J04425
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武田 貴志 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 三中心二電子結合 / X線構造解析 / 温度可変NMR / 電荷移動相互作用 / カルボカチオン / 長い結合 / ヒドリドシフト |
Research Abstract |
単離可能な[C-H-C]^+三中心結合の合成および物性の解明を目的とし以下の研究を展開した。 1.ナフタレンに組み込まれた分子内アクリダン-アクリジニウム錯体の合成と性質 アクリダンとアクリジニウムをナフタレンの1,8-位に組み込んだ分子内トリアリールメタン-トリアリールメチリウム錯体の発生、単離に成功した。低温X線構造解析の結果、そのC-H…C^+部位は2.14Åという近接位に位置しているものの、局在化構造を有していることが明らかとなった。室温の^1H NMRではC_<2v>対称性のブロードなピークが観測されたが、-90℃ではアクリジニウムとアクリダンに対応するピークが分裂して観測され、溶液状態においても速いヒドリドシフトで相互変換する局在化構造であることが確かめられた。このものは750nm程度の長波長まで吸収を有しており、分子内電荷移動相互作用があることが確かめられた。 2.三中心二電子結合に対する電子的効果の検討 カチオン部位の安定性と三中心結合性との相関を調査する目的でアニシル基、フェニル基を組み込みカチオンの安定性を低下させた化学種を合成した。これらにおいては吸収スペクトルの形状は大きく異なっているものの電荷移動相互作用が示唆され、固相、溶液状態ともに局在化した構造であることが確かめられた。分子内ヒドリドシフトの活性化障壁はアクリダン-アクリジニウム錯体とほぼ同一であり、三中心結合への電子的効果は小さく、母骨格の構造によって結合性がほぼ決定されることが示唆された。 3.最長の炭素-炭素単結合を有する化合物の合成と単離 上記1および2の合成研究に関連して、8種類の1,1,2,2-テトラアリールピラセン誘導体の合成単離に成功した。このものからC・H…C^+化学種の発生はできなかったが、この化学種が例外なく1.7Åを超える非常に長いC-C単結合を有しており、世界最長の結合長の記録を更新した。
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Research Products
(1 results)