2007 Fiscal Year Annual Research Report
免疫バランス制御を介した新たな癌ワクチン療法の開発とそのメカニズムの解析
Project/Area Number |
06J04446
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
脇田 大功 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 癌免疫監視機構 / 原発腫瘍 / メチルコラントレン / CpGオリゴヌクレオチド |
Research Abstract |
前年度までに、Toll様受容体(TLR)-9のリガンドであるCpGオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)をアジュバントとして用いた癌ワクチン療法の、抗腫瘍効果を移植腫瘍の実験系にて証明した。そこで、本年度は、原発腫瘍に対するCpG-ODNの抗腫瘍効果について検討を行った。臨床への応用を考慮した場合、原発腫瘍に対する効果の有無は非常に重要な点である。まず、ヒトで発生するがんの大部分は上皮性腫瘍であることから、原発上皮性腫瘍の発癌モデルの確立を試みた。化学発癌剤であるメチルコラントレンをマウス腹部皮下および皮内に接種し、原発腫瘍の発生を調べた。皮下接種群では全てのマウスで線維芽肉腫が発生したのに対し、皮内接種群で発生した腫瘍は約半数が上皮性腫瘍であることが確認された。今回用いた手法では、一回の発癌剤接種のみで、効率的に皮膚上皮性腫瘍が誘導可能であり、皮膚上皮性腫瘍に対する免疫応答を検討する上で、非常に有用な方法であるといえる。 次に、今回確立した発癌モデルを用い、CpG-ODNの原発腫瘍に対する抗腫瘍効果を、原発腫瘍の発生率(発癌率)を指標に評価した。メチルコラントレンを皮内接種し、2週間後よりCpG-ODNを10日毎に接種した。10週目における発癌率を比較すると、対照群では約70%であるのに対し、CpG-ODN接種群では約30%であり、CpG-ODNは原発腫瘍に対しても抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。また、CpG-ODN接種群では特に上皮性腫瘍の発生を強く抑制しており、CpG-ODNの原発上皮性腫瘍に対する抗腫瘍効果が確認された。 原発腫瘍に対する抗腫瘍効果の検討はほとんど行なわれておらず、CpG-ODNによって原発上皮性腫瘍の発生を抑制した結果は非常に有意であり、臨床における効果が期待される。
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