2006 Fiscal Year Annual Research Report
III-V族化合物半導体の表面制御と量子ナノ構造への応用
Project/Area Number |
06J04485
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
塩崎 奈々子 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 窒化ガリウム / 陽極酸化 / グリコール / X線光電子分光法 / 表面薄膜 |
Research Abstract |
窒化ガリウム(GaN)は高出力・高周波デバイスとして応用が期待される材料であるが、ドライプロセスにより表面に誘起される欠陥はその優れた特性を劣化させる原因となる。今年度はGaN系材料表面の理解と制御を目的とし、光電気化学を用いたウェットプロセスを適用した。 実験方法は、ポテンショスタットの陽極、陰極にn-GaN基板、Pt板を接続し、3%酒石酸水溶液とプロピレングリコールを1:2の割合で混合させた溶液(AGW溶液)中に浸した3電極系の電気化学セルを用い、基板表面に紫外光を照射しながら定電圧を印加するというものである。 3〜20Vの定電圧で通電するとGaN表面にはガリウム酸化膜の形成が確認できたが、電圧印加時間を5〜30分と長くするにつれ、膜表面はラフネスが増しクラックが発生すると共に、酸化膜/GaN界面あるいは酸化膜中に金属ガリウムが析出した。プロセス中、電流値は電圧印加初期において急激な上昇を示し徐々に減少したことから、GaN表面の欠陥部分から優先的に流れた電流が、不均一な酸化反応を引き起こしたものと考えられる。 初期電流値を制御するため、25mV/sの速度で3Vまで上昇させた後定電圧に切り替えるramp型電圧パターンを採用すると、表面のRMSラフネスは、3Vの定電圧酸化で得られた表面の52nmと比べ1.9nmまで劇的に改善された。GaNと酸化膜の界面には約10nm厚の組成遷移層が形成されており、その上の約90nmある酸化膜は、アモルファスGaO_xと多結晶の混合であることが透過型電子顕微鏡観察により判明した。フォトルミネッセンス測定により、酸化膜を形成した領域は、同一基板上の膜を形成していない部分に比べ発光強度が約3倍増加した。 研究を通して、電気化学プロセスによるGaN表面構造の変化を調べ条件を最適化した結果、表面保護膜として期待できる母体半導体由来の酸化膜形成に成功した。
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Research Products
(1 results)