2008 Fiscal Year Annual Research Report
アリのカースト進化に伴う翅多型メカニズムに関する進化生態学的研究
Project/Area Number |
06J04529
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮崎 智史 Hokkaido University, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アリ / カースト / 性的二型 / カドフシアリ / トゲオオハリアリ / 中間型繁殖カースト / 体色 / 幼若ホルモン |
Research Abstract |
アリの社会は雌カースト間での繁殖分業により成り立つが,その社会形態が種ごとに多様で,カースト間の形態差異が顕著である.そして雌雄間でも形態が顕著に異なるという特徴をもつ.アリの社会進化においてこれらの特徴を獲得したことは極めて重要であり,それらの形態を創出するメカニズムを解明することで,アリ類において顕著な形態分化及び複雑な社会性が進化してきた過程の考察が可能になるだろう.本年度はトゲオオハリアリにおいて顕著な性分化の過程について調べた. トゲオオハリアリの体色は雌が黒,雄が赤褐色と顕著に異なる.体色発現過程の観察により,この性差は黒色メラニンの有無により制御されることが示唆された.続いてメラニン生成に関わる体色遺伝子群の発現様式を雌雄で比較し,黒色メラニンの生成に関わるyellowの発現量が雌で高いことを示した.さらにRNAiによる遺伝子機能の解析を行い,yellowが雌の黒化に重要な役割を果たすことを示した.また,JH類似体の塗布実験により黒化不全が誘導され,さらにyellowの発現を著しく低下させたことから,色素生成に対するJHの抑制的な働きが示唆された.さらにJH感受期におけるJH濃度は雄の方が高く,一方JH受容体候補とされるMet遺伝子の発現に性特異的な傾向は見られなかった.従って,JHの性特異的な働きにより,雌雄で共有する遺伝子経路の一部がモジュールとしてその発現様式を変更されることで体色性差が実現されることを示唆した. 本研究では形質発現に関わる遺伝子経路を性特異的に使い分けることで顕著な性分化をもたらすことを示したが,同様の機構により性もしくはカースト間で顕著な形態分化を実現することで,複雑なアリの社会性が維持されていると示唆される.
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Research Products
(2 results)