2007 Fiscal Year Annual Research Report
臨床研究における権力関係と社会的規制に関する研究-被験者保護システム構築のために
Project/Area Number |
06J04806
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田代 志門 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 医療社会学 / 生命倫理 / 被験者保護 / 研究倫理 / 臨床試験 |
Research Abstract |
本年度は、(1)金沢大学無断臨床試験訴訟を事例として、日本の被験者保護制度の課題を明らかにすると同時に、(2)緩和医療の現場への参与観察とインタビュー調査を通じて、被験者となる可能性のある患者の「病いの経験」の諸相を明らかにする作業に従事した。 まず、(1)については、遺族の許諾を得て、裁判資料の閲覧を行うとともに、関係者に聞き取り調査を行い、事例の全体像を把握した。そのさい、特に当該事例を「臨床試験ではない」と主張する医師=研究者側の論理構造とその社会的背景に着目して資料の収集・分析を行った。その結果、医師=研究者側の主張には、一定の合理的な根拠があるものの、保険適応の有無によって、研究と治療を単純に区別している点と、「目の前の患者のため」と「患者たちのため」という二つの目的の区別がされていない点に問題があることがわかった。また同時に、こうした医師=研究者側の意識は、わが国における研究規制システムの不備を反映している可能性があるため、改めて日本における研究規制制度の歴史的生成過程を検証することの重要性が示唆された。 他方、(2)については、被験者=患者の視点から被験者保護システムを再構築するという本研究の目的を達成するため、抗がん剤の臨床試験の対象者となりうるがん患者へのインタビュー調査を行った。インタビュー対象者は、協力施設からの紹介を受けた在宅の終末期がん患者10名であり、1人あたり平均して2時間程度のライフストーリー・インタビューを行った。これについては、現在トランスクリプトを作成するとともに、他分野の専門家を交えて、内容の分析を進めており、来年度には研究成果を学会報告したうえで、学術論文として公刊する予定である。
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Research Products
(5 results)