2008 Fiscal Year Annual Research Report
臨床研究における権力関係と社会的規制に関する研究-被験者保護システム構築のために
Project/Area Number |
06J04806
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田代 志門 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 医療社会学 / 生命倫理 / 被験者保護 / 研究倫理 / 臨床試験 |
Research Abstract |
本年度は、(1)昨年行った臨床試験に関する訴訟の事例研究、およびがん患者へのインタビュー調査の成果を学術論文として公刊するとともに、(2)外科領域における研究規制のあり方について研究を行い、その結果を学術論文として公刊することによって、「研究と診療の区別」という観点から、あるべき被験者保護システムの方向性を提示した。 まず(1)については、金沢大学無断臨床試験訴訟における医師側の主張の論理構成を詳細に読み解くことを通じて、医師の視点からみた研究倫理の特徴とその課題を明らかにした。具体的には、本事例では画一的な治療法を普及させるための教育・啓発活動として臨床試験が実施されており、それが研究倫理の基本的な枠組みを掘り崩しかやないことを指摘した。加えて、がん患者へのインタビュー調査からは、既存の医療システムが終末期患者のニーズを十分に満たしていないことが明らかになり、患者の視点から臨床試験のあり方を見直していくことの重要性が示された。次に(2)については、従来の医薬品や医療機器の開発を念頭においた被験者保護システムが十分に機能していない外科領域をとりあげ、外科の技術革新をどのように規制するべきかという問題を検討した。外科の領域は、医師や医療チームの経験・技術が大きく影響するため、画一的な研究規制は困難だとされている。そこで、外科手術の革新に関しては、従来の「研究ルート」のみならず、「診療ルート」を通る道を提示することで、個別ケースに即した有効な規制が可能になるという視点を提示した。以上、本研究では、望ましい被験者保護システムのあり方について、概念的・歴史的・実証的アプローチによる多面的な研究成果を生み出すことができた。くわえて、本年度は、これらの研究成果に基づいたアウトリーチ活動を重点的に行い、研究成果を積極的に社会に還元していくことにも成功した。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article]2008
Author(s)
田代志門
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Journal Title
過去を忘れない--語り継ぐ経験の社会学(桜井厚・山田富秋・藤井泰編,共著)(せりか書房)
Pages: 139-156
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