2006 Fiscal Year Annual Research Report
水生昆虫集団の個体群動態の履歴に因る遺伝構造の形成と生息地分断による遺伝的分化
Project/Area Number |
06J04873
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 幸三 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 河川底生動物 / DNA多型 / 遺伝的多様性 / 生息地分断化 / AFLP法 |
Research Abstract |
湛水面積が異なる複数のダム湖周辺でヒゲナガカワトビケラ,ウルマーシマトビケラ,クロマダラカゲロウの3種地域集団のRAPD解析を行い,ダム上下流間の遺伝的分化やそれに伴う遺伝的多様性の低下の影響を評価した。ヒゲナガカワトビケラの遺伝的分化は6つのダム湖のうち湛水面積が3.27km^2以上の2つの大きなダム湖で遺伝的に分化していたが,ウルマーシマトビケラは湛水面積が小さい場合でも分化することがあった.また,ウルマーシマトビケラの遺伝的多様性の低下要因として,集団サイズの低下とダムによる生息地分断化の2因子が働くが,残り2種は集団サイズの低下のみが主に働いていることが明らかになった.これらの研究成果は,土木学会論文集およびBiological Conservation誌に掲載された。 平常時の個体群密度が過去4年間に調査された多摩川流域の6地点で,台風で生じた大出水直後にウルマーシマトビケラ地域集団の遺伝的多様性をAFLP法で調べた.その結果,台風直後の多型遺伝子座の割合(%P)は,台風の影響を受けていない過去4年間の平均個体群密度(N_<pre-typhoon>)と正の相関があることが明らかにされた.この相関を定式化した単回帰モデル%P=0.134 log_<10> N_<pre-typhoon>+0.186を用いることで,台風が起きた直後であっても,%Pを測定すれば,台風が影響していなかった状態の個体群密度を推測できる可能性が示された.水生昆虫の個体群密度は河川生物モニタリングの主要な評価項目であるが,台風等の影響を受けて調査時期により大きく変動するため,評価の不確実性が問題となることがある.本研究成果はこの問題を解決する技術として期待される。この研究成果をまとめた論文は土木学会論文集に投稿した。
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Research Products
(3 results)