2006 Fiscal Year Annual Research Report
養殖環境のストレスがマガキの生体防御能と疾病感受性に与える影響について
Project/Area Number |
06J04887
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 直樹 東北大学, 大学院農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | マガキ / 生体防御 / リゾチーム / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本年度は当研究課題の1年目であり、まずは研究技術の習得及び情報収集を主に行った。そのため平成18年4月より10月まで、米国ルイジアナ州立大学La Peyre博士の研究グループにてマガキの近縁種バージニアガキの生体防御研究に参画した。その成果として、バージニアガキの重要な生体防御因子と考えられるリゾチーム2種類の精製とそれらの遺伝子同定に成功した。従来、二枚貝類は1種類のリゾチームのみを持ち、溶菌活性の測定から生理機能を判断・評価していた。しかし、この成果より溶菌活性で測定されるリゾチーム活性は、複数種のリゾチーム活性の総和であり、各種リゾチームの生理機能を判断・評価するためには、分子生物学的手法を含む新たな方法が必要であることが示唆された。そこで、各リゾチームを特異的に検出する定量RT-PCR法、発現組織の同定のためのin situ hybridization法、及び各リゾチームのみが活性を示す溶菌活性測定系を構築することに成功した。さらに、カキ類の病原体が宿主組織を溶解するために分泌するプロテアーゼを強力に阻害する物質をバージニアガキから分離・精製し、遺伝子同定及び発現解析を行った。これらの知見はカキ類では全く新しいものであり、十分な情報を得られた。その後、米国にて獲得した研究技術をマガキに応用し、マガキに関しても複数のリゾチームが存在することを明らかにした。このことから、リゾチームが関与するマガキ生体防御研究に新たな手法を導入する必要があることが示唆された。なお、マガキの生体防御能を病原体の面から研究するため、マガキに寄生する原虫Marteilioides chungmuensisに関して東京大学大学院のKay Lwin Tun博士とも共同で研究を行い、その病原性を明らかにした。このことから、将来的にこの寄生虫を用いた感染実験系の確立に役立つと思われる。
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