2006 Fiscal Year Annual Research Report
人間の適切な受け渡し動作を規定する「心の理論」および脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
06J04952
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 寛 東北大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 協同動作 / 受け渡し動作 / 適切動作 / NIRS / ミラーニューロンシステム / ERP / N400 / かき混ぜ文 |
Research Abstract |
本研究では、人間二者間の協同動作場面として物体の受け渡し動作を取り上げた。そして、一方の動作(手渡し動作)に対してもう一方の動作(受け取り動作)が適切もしくは不適切だと判断されるときの脳内メカニズムを明らかにするために実験を行った。まずは受け取り動作の適切さを評定しているときに、他者の動作の模倣に重要な役割を果たすと考えられているミラーニューロンシステムが想定されている脳部位がどのように働くかを調べる実験を行った。実験では近赤外光スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy : NIRS)を用いて、腹側運動前野および下前頭回付近の脳皮質の活動を調べた。その結果、適切な動作を評定している最中は、不適切な動作を評定しているときど比べて、ミラーニューロンシステム想定部位(中心前回、下前頭回)の脳血流量が上昇することが明らかになった。 また、手渡し動作に対して受け取り動作が適切か不適切かを判断しているときの事象関連電位(event-related potential : ERP)を調べる実験も行った。その結果、不適切な動作を評価しているときに適切な動作を評価しているときよりも大きな陰性電位が喚起された。刺激提示から400ms後付近で頭頂付近を中心とした陰性電位(N400)が生じており、これらの結果から人間二者間の文脈における動作の不適切さ判断が意味逸脱として処理されている可能性が示唆された。 本研究では言語処理に関する研究によって得られた知見を参考にして二者間の動作の認識や理解を調べている。そこで、間接プライミング効果を指標として、日本語かき混ぜ文(目的語・主語・動詞の語順)の認知処理について調べる実験も行った。その結果、かき混ぜ文は主語・目的語・動詞の語順で処理されることや動詞の位置では目的語の活性化水準が急速に減衰することなどが示唆された。
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