2006 Fiscal Year Annual Research Report
光合成系の色素における超高速現象及び非線形光学応答の研究
Project/Area Number |
06J05013
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小澄 大輔 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超高速現象 / 非線形光学応答 / 光合成 / 低次元物質 / ラマン分光 |
Research Abstract |
本研究では、光合成初期過程において光アンテナの役割を果たす色素の一つであるカロテノイド類の超高速緩和過程について明らかにし、フェムト秒時間分解誘導ラマン分光の装置の改良を行った。 カロテノイドでは光学許容な励起1重項状態S2を光励起後、S_2→S_1→S_0(基底状態)と連続的に緩和が起こることが知られている。近年、理論計算と実験結果から共役長が長いカロテノイドでは、S_2とS_1の間に中間状態が存在することが示されている。しかし、この中間状態の励起状態ダイナミクスに関する影響は明らかにされていない。そのため、カロテノイドの励起状態ダイナミクスを理解するためには、共役長依存性を調べることが必要不可欠である。大阪市立大学の橋本教授らのグループにより作成された、骨格の共役長を系統的に変えたカロテノイドにおいて、フェムト秒時間分解発光分光・吸収分光を同一条件下で行うことにより、緩和ダイナミクスの共役長依存性を調べた。本研究により共役長が長いカロテノイドでは、短いカロテノイドにはない中間状態が存在し、S_2→S_1の超高速緩和をアシストしていることが初めて明らかになった。本研究の結果から人工的に光合成組織を作成する際の指針が得られ、研究成果を国際学術雑誌に発表した。 フェムト秒時間分解誘導ラマン分光においては、装置のスペクトル分解能を決定するラマン励起光の改良を行った。従来の方法では、市販の狭帯域干渉フィルターを用いていたが、本研究では回折格子対とスリットを組み合わせた周波数フィルターを作成することで、従来の手法よりもスペクトル分解能を向上させることに成功した。また、検出系には特別研究員奨励費により購入した高速シャッターをレーザーのパルス繰り返し(1kHz)に同期させることで検出感度の向上をおこなった。フェムト秒時間分解誘導ラマン分光は、高い時間分解能とスペクトル分解能を両立させることができるため、今後励起状態における振動ダイナミクスの観測に、大きく貢献することが期待される。
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Research Products
(7 results)