2007 Fiscal Year Annual Research Report
現実的4f殻構造と結晶場構造を考慮した強相関電子系の動力学的理論
Project/Area Number |
06J05014
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大槻 純也 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 強相関電子系 / 希土類化合物 / 連続時間量子モンテカルロ法 / Coqblin-Schrieffer模型 / 近藤模型 / 近藤格子模型 |
Research Abstract |
動的平均場理論は、希土類化合物など強相関電子系の研究において最も広く用いられている近似法である。この枠組みで実際に物理量を計算するには、有効的な一不純物問題を解く必要がある。不純物模型の数値的解法として、近年、連続時間量子モンテカルロ法(CT-QMC)が開発された。この手法は、通常の量子モンテカルロ法で用いられているTrotter分解を使わないため、統計誤差を除けば厳密である。また、Anderson模型の原子極限からの定式化では、負符号問題が現れないため、動的平均場理論の不純物ソルバーとして優れた手法である。ただし、電子間相互作用が強い場合あるいは局在レベルが深い場合は、更新確率が減少するため、強相関領域は扱うのが困難であるという問題があった。この問題を解決するために、我々はCT-QMCをAnderson模型の強相関極限であるCoqblin-Schrieffer(CS)模型及び近藤模型に拡張した。それにより、CS・近藤模型の動的物理量が、統計誤差の範囲で厳密に計算可能になった。 不純物ソルバーとして我々が開発したCT-QMCを用いて、無限次元の近藤格子模型の研究を行った。近藤格子模型はこれまで一次元に関しては詳しく調べられており、本研究はそれに対する相補的な研究であるといえる。局在スピンの空間相関を調べるために、動的平均場理論で自己無撞着に計算される一粒子Green関数を用いて、二体相関関数の波数依存性の定式化を行った。この表式を用いることにより、局在スピンの帯磁率および伝導電子のスピン・電荷感受率が計算でき、それらの発散から相転移温度を見積もることができる。我々は、結合定数および伝導電子数を変化させて数値計算を行い、基底状態相図を決定した。その結果、RKKY相互作用による磁気秩序相や近藤効果による常磁性相に加えて、1/4フィリングにおいてCDW相が見つかった。この転移は、近藤一重項によるエネルギー利得を大きくするために起こると考えられ、新しい機構のCDW転移である。
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