2006 Fiscal Year Annual Research Report
沈み込む海洋プレート物質の含水条件下における相関係
Project/Area Number |
06J05035
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐野 亜沙美 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高圧物性 / 放射光X線回折 / 中性子回折 / ダイアモンドアンビルセル / マルチアンビルプレス / 水素結合の対称化 / δ-AlOOH / 沈み込み帯 |
Research Abstract |
海洋プレートを構成する中央海嶺玄武岩において下部マントル上部に相当する圧力で起きるガーネット-ペロブスカイト相転移は大きな密度変化を伴うため沈み込んだスラブの振る舞いを考える上で重要な相転移である。申請者はこの相境界に与える水の影響を調べるためにマルチアンビルプレスを用いた放射光X線その場観察実験を行い、その結果について国際誌に投稿し掲載された。この結果は水の存在下において相境界が無水の場合よりも約2GPa低圧側に移動することが明らかにしたものであり、水が玄武岩層の沈み込みに重要な役割を果たしていることを示すものである。 また沈み込む海洋プレート中に存在すると考えられている含水鉱物δ-AlOOH相の安定領域をダイアモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験により決定した。実験の結果40GPaから130GPaまでの広い圧力条件下でδ-AlOOH相の存在が確認された。これはこれまで報告されている含水鉱物のなかでも最も高圧条件であり、δ-AlOOH相は下部マントル最下部まで水を運びうる重要なリザーバーとなりうることが示された。 さらにδ-AlOOH相は第一原理計算により高圧下で水素結合の対称化が起こることが予言されている鉱物である。この可能性を実験的に探るためにマルチアンビル型高圧発生装置を用いて18GPa・1100℃にて合成したδ-AlOODについて、飛行時間法による中性子回折実験をイギリスのラザフォード・アプルトン研究所のISISにて行った。常温常圧下、さらにパリーエジンバラセル高圧発生装置を用いて10GPa程度まで加圧を行いながら異なる圧力で数点の粉末回折パターンを収集した。その結果常圧においては非対称な位置に存在していた水素が加圧に伴い水素は酸素一酸素間の中心へと移動していく様子が観察され、約24GPaまでに水素結合は対称化するという結果が得られた。
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