2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J05093
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
介川 裕章 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピントルク / 強磁性二重トンネル接合 |
Research Abstract |
スピン注入磁化反転(CIMS)はスピン偏極電流によりナノマグネットの磁化を反転させる技術である。磁化反転には磁化固着層(ピン層)から供給されるスピントルクが大きな役割を果たしている。CIMSはトンネル磁気抵抗型不揮発性メモリ(MRAM)の低動作電力化,大容量化のためのキーテクノロジーであるが,現状では十分な理解が進んでいない。 申請者は,CIMSに関するより詳細な理解を得るために,絶縁層を2層有する強磁性トンネル接合(MTJ)である強磁性二重トンネル接合(DTJ)に注目した。DTJは2つのピン層を有するため,その両者から供給されるスピントルクがCIMS現象に大きな影響を与えると考えられる。特に,2つのピン層の磁化配列が平行と反平行では大きな違いが現れることが予測され,実際にどのような違いが現れるかを明らかにした。 結果として,平行配列したピン層を持つDTJでは,CIMS挙動は変則的となり,時には不安定な抵抗状態も生じる様子が確認された。これは絶縁層を一層しか持たないMTJ(STJ)では観察されない現象であり,2つのピン層から打ち消し合うようなスピントルクが発生していると考えられる。したがって,この構造では正常なCIMS挙動が抑制されるように振る舞うことがわかった。一方,反平行配列したピン層を持つDTJでは,磁化反転が起こる電流密度がSTJと比べて半減し,CIMS効率が高まっていることがわかった。この構造では,ピン層から強め合うようなスピントルクが発生すると考えられ,結果としてCIMSが促進されているように振る舞うことが示された。この反平行配列したピン層を持つDTJはCIMSの反転電流密度の低減に有用な構造であり,MRAMへの応用も期待できる。
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