Research Abstract |
【背景と目的】近年,我が国の深刻なアレルギー罹患者は,人口のおよそ1/3にまで激増し,大きな社会問題になっている.そこで本研究では,免疫応答に重要な役割を果している微生物由来成分認識受容体,Toll-like receptor(TLR)に着目し,乳酸菌成分の腸管免疫を介するアレルギー発症防御機構を解明することを目的とした. 【材料と方法】免疫組織化学的手法により,初生仔ブタの腸管免疫系におけるTLR2およびTLR9の発現解析をおこなった.また,機能解析として乳酸菌体を含めた各種リガンド刺激を行い,フローサイトメトリーによるリガンド取り込み解析について検討した.リポフェクション法により,HEK293細胞にブタTLR2を強制発現させ,高免疫機能性乳酸菌の選抜を行った.RP105/MD-1を成熟ブタ腸管免疫系よりクローニングし,全構造遺伝子を解読した.ブタRP105/MD-1共強制発現細胞を構築し,菌体外多糖刺激後のNF-kBレポーター解析を行った. 【結果と考察】初生仔ブタ腸管免疫系において,抗ブタTLR2,9抗体および抗サイトケラチン18抗体を用いた二重染色により,初生仔ブタの腸管関連リンパ組織とM細胞にTLR2,9の強い発現が認められた.また,フローサイトメトリー解析により,これらの細胞における強いリガンド結合性を見出した.ブタTLR2強制発現細胞による新規分子免疫活性評価系を構築し,供試238菌株から10菌株の高免疫機能性乳酸菌の選抜に成功した.また,RP105/MD-1共強制発現細胞において,菌体外多糖のRP105/MD-1を介するシグナル伝達とサイトカイン産生誘導が認められた.今後,腸管組織培養やin vivoにおいて検討することにより,アレルギー防御食品の創製に繋がると考えられる.
|