2007 Fiscal Year Annual Research Report
加速進化型ガレクチンの分子進化メカニズムの解析とタンパク質分子設計法への応用
Project/Area Number |
06J05155
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
今野 歩 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | タンパク質工学 / 分子進化 / 加速進化 / レクチン / ガレクチン |
Research Abstract |
1年目までに作成していた祖先型Congerin(Con-anc)を鋳型として、一部の配列を現存するタンパク質の配列に置換した変異体をターゲットとする残基ごとに作成した。この変異体の性質を調べることにより、どの配列が現存するタンパク質のどのような機能に関与しているかを明らかにすることができた。このような方法を「分子進化トレース法」として学会発表した。同様の手法は分子進化自体の研究ではいくつか報告があるが、「タンパク質の構造活性相関のツール」として用いた例はあまりない。 一方、共同研究よりCon-ancのX線構造解析が成功し、Con-ancが特別なフォールド様式(ストランド-スワップ構造)をとっていることが明らかになった。Con-ancの糖結合能や構造安定性がストランド-スワップ構造をとっていないConIIとほぼ同程度であったため、ストランド-スワップの機能は未だ不明であった。そこで、近年DNA配列が明らかになった8つの魚類ガレクチンを祖先型Congerinの配列予測の計算に加え、新しい祖先型CongerinをCon-ancNとして作成した。Con-ancNはX線構造解析から、ストランド-スワップ構造をとっていないことが明らかになった。一方、Con-ancNの糖結合能はConIIやCon-ancと同程度だったにも関わらず、アポトーシス誘導活性は著しく低かった。アポトーシス誘導活性には二量体を作ることが必須であるとの報告があるので、Con-ancNでは二量体構造の安定性が低くなっていることが示唆された。このことからストランド-スワップ構造は、全体の構造安定性よりもむしろ、二量体構造の安定化に寄与していることが示唆された。 以上のような、祖先型タンパク質の復元とそれに続く分子進化トレース法をまとめて、「分子進化史再構築」と名付け、この成果を博士論文としてまとめた。このような方法はタンパク質分子設計法への応用という意味でも十分に応用可能であり、祖先型タンパク質の復元を元にした「タンパク質分子設計法の新領域」を提示しうる可能性を秘めていると考えている。
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Research Products
(4 results)