2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における医療専門職の「臨床化」戦略-コメディカルを中心として-
Project/Area Number |
06J05225
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸山 和昭 東北大学, 大学院教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 教育社会学 / 専門職化 / 対人専門職 / 臨床化 / カウンセラー / 医療専門職 / 臨床心理士 / 初中等教員 |
Research Abstract |
近年、臨床心理士をはじめとする対人サービスを担う専門職集団において「科学的知識ではなく、クライアントとの共感を武器に、他専門職との差異化を図る」という従来の専門職化戦略と一見矛盾した戦略がカウンセリング等の臨床概念と共に採用されている。本研究では、このような新たな専門職化の在り方を「臨床化モデル」として明らかにするものである。具体的には臨床の語源でもある医療現場の専門職、臨床心理士等の境界専門職、教師などの非医療専門職の三職域に対して歴史・現在・国際比較の視点から事例研究を行っていく。本年度は、日本における初中等教員の専門職化過程について、文書資料・統計資料・関係者の証言を基に分析を行った。 まず、日本の教員集団は戦後において、公務員規定及び労働運動との関わりから、科学的知識によって素人との差異化を図る戦略を積極的に採用してこなかった。1970年代には給与面での一般公務員との差異化が行われるものの、その政策過程は自民党文教族を中心とした政治主導を特徴とするもので、やはり職業集団の自律性や高度な専門知識を前提とする理念型的な専門職化過程と適合するものではない。これに対し、80年代以降は、世論の教員批判・公務員批判に対応して教員管理や採用・待遇面での脱専門職化政策が進められるのに対し、教員集団は外部の専門家の学校教育への投入を促す立場を採用している。 以上より、臨床化を捉える際には、職業集団の戦略としてのみではなく、脱専門職化の可能性も含んだ政策措置にも注目した上で、政治セクター等の多様な関連アクターの相互作用から捉える必要があることが明らかになった。このような知見を踏まえ、現在は生徒指導業務に観点を絞ることで、教育領域がカウンセリング等の臨床概念を受け入れていった過程の検討を行っている。今後は教育以外の非医療領域や医療専門職の動向にまで研究の幅を広げていくものである。
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