2007 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における医療専門職の「臨床化」戦略-コメディカルを中心として-
Project/Area Number |
06J05225
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸山 和昭 Tohoku University, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 教育社会学 / 専門職化 / 対人専門職 / 臨床化 / カウンセラー / 医療専門職 / 臨床心理士 / 初中等教員 |
Research Abstract |
本年度は、コメディカルに端を発する臨床心理士の発達モデルを、一般的な社会状況との関連から捉える目的から、より幅広い職業カテゴリーである「カウンセラー」に注目し、日本における現状や、普及過程に関する分析を進めてきた。また、臨床心理士と比較しうる歴史・資格・職域を有する「カウンセラー」の事例として、産業カウンセラー及び生徒指導担当者の発達過程についても具体的な歴史資料を用いて明らかにしてきた。これまでの研究において明らかにされた知見は以下の3点にまとめることができる。まず、第一に職業としてのカウンセラーは、複数の専門職業によって構成された"開かれたシステム"の状態にある。定義・資格・職域はいずれも単一の職種によって管轄される状態にはない。第二に、カウンセラーの発達においては、戦後初期の"Counseling"の輸入や、メンタルヘルス需要の勃興といった、各職域を横断する共時的な外部要因の影響を無視することができない。しかし、第三に、これらの日本における職業カウンセラーの揺らぎは、"カウンセラー"と称される各職業の分断された歴史過程を背景としている。単一職業としてのカウンセラーの専門職化の視点からは障害と見なされる分裂状態は、各職域に分立した"カウンセラー"の職業発達の結果である、と言い換えることもできる。本研究の最終的な目的は、これらの知見をより一般的な職業成長の枠組みから、現代の日本社会における職域開拓の「臨床化」モデルとして提示していくことにある。そのためには、「米国における専攻する専門職論の整理」「公共言説・政策論議といったマクロな社会的文脈の分析」「より周辺的なカウンセラー集団への注目」が今後の課題とされる点である。
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