2006 Fiscal Year Annual Research Report
能動型測器を用いた氷晶雲の巨視的構造と微物理特性の関係解明に関する研究
Project/Area Number |
06J05247
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 可織 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 能動型測器 / 氷晶雲 / 微物理特性 / 鉛直流 / 鉛直構造 / 解析手法 / 船舶観測 / 衛星観測 |
Research Abstract |
多様な時空間スケールで存在する氷晶雲と気候システムの相互作用を理解するには能動型測器を搭載した船舶により得た詳細な雲の微物理量の時間-高度分布の情報と、全球規模での観測が可能な衛星の観測データを併用して用いる事が有効ある。従って本年度は、次年度以降に様々なスケールのモデルでの氷晶雲の再現性を検証する上で必要な解析データセットを作成する為、船舶・衛星データの整備と解析手法の開発・検証を実践した。以下にその研究成果を示す。 1.開発した氷晶雲の微物理特性抽出手法(Sato and Okamoto, JGR,2006)を検証・拡張し、微物理量や鉛直流といった詳細雲微物理モデルで氷粒子の生成・成長過程を再現するのに重要な入力パラメータを十分に良い精度で抽出する事が可能となった(Heymsfield et al. JAM, in revision)。特に鉛直流の抽出は微物理量の抽出精度を向上させるだけでなく、対流圏上部の鉛直流構造が観測困難な海洋上で得られるようになったという点においても非常に大きい利点と言える。 2.観測船「みらい」の熱帯・中緯度・極域の雲レーダ/ライダデータに開発したアルゴリズムを適用し、得られた上層雲の微物理特性と鉛直流の関係を調べた。その結果、熱帯海域で特に12km以上の強い上昇流域で雲粒の生成が盛んに行われ、それ以下の高度で雲粒の衝突併合成長が卓越しているといった事が示唆され、開発した手法が雲の生成・寿命に関わる重要な過程の理解に有効な手段である事がわかった。 3.さらに上記の微物理量と鉛直流の関係がどの様なメカニズムによりもたらされ、維持されるのかを理解る為に衛星観測データの解析結果(Rossow et al.,2005,GRL)を用い、レーダ・ライダで解析した雲とその周囲の気象場との関連づけを行った。その結果、対流活動が活発・不活発な気象場中に存在する雲ではその微物理特性や鉛直流構造に顕著な違いがある事がわかり、ここで得られた知見の更なる活用が氷晶雲の巨視的構造及び微物理特性の関係解明につながると期待される。
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