2006 Fiscal Year Annual Research Report
強レーザー場誘起イオン化の理論的評価法の開発と超高速分子ダイナミクスの実時間追跡
Project/Area Number |
06J05252
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅野 学 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 強レーザー場 / 分子ダイナミクス / 理論計算 / 光電子スペクトル / 環電流 / 国際情報交換 / ドイツ |
Research Abstract |
1.電子波束S行列法への時間依存断熱電子状態法の導入 我々が開発した電子波束S行列法は、強レーザー場中の多電子・多原子分子のイオン化を定量的に評価することを目的とした理論的手法である。従来の電子波束S行列法は、束縛状態のみで構成される時間依存の波束のノルムが保存するために、イオン化確率を過大評価するという問題点があった。そこで、電子Hamiltonianに時間依存断熱電子状態法に基づいた吸収ポテンシャルを付加して波束のノルム減少を考慮することにより、イオン化確率の計算の定量性を向上させた。 2.直線偏光レーザーパルスによるキラル芳香族分子のπ電子回転制御 芳香族分子の非局在π電子は、原理的に紫外・可視光を用いて制御することができる。例えば、アキラル芳香族分子に円偏光レーザーパルスを照射してπ電子の芳香環に沿った回転(環電流)を生成できることが容易に理解される。この場合、光のキラリティーが電子運動のキラリティーに変換され、π電子の回転方向は偏光軸の回転方向により一意に決定される。これに対し、キラル芳香族分子にキラリティーを持たない直線偏光レーザーパルスを照射しても、分子キラリティーを電子運動のキラリティーの源とした方向性環電流を分子に誘起し、回転方向を制御できることを明らかにした。キラル芳香族分子は光学許容で擬縮退したπ電子励起状態の組を持つ。この擬縮退状態の線形結合は、π電子の芳香環に沿った回転の角運動:量演算子l^^^の近似的な固有状態|+>と|->を与える。|+>または|->の一方を光によって選択的に生成すれば、π電子は芳香環を反時計回りまたは時計回りに回転する。6員環のキラル芳香族分子2,5-Dichloro[n](3,6)pyrazinophane(DCP)のR異性体を対象として、π電子回転制御シミュレーションを行った。その結果から、(1)偏光軸を適切に選んだ直線偏光パンプパルスを照射して任意の方向へのπ電子回転を誘起できること、(2)偏光軸を適切に選んだ直線偏光ダンプパルスを照射してπ電子回転を停止できること、を示した。
|
Research Products
(1 results)