2007 Fiscal Year Annual Research Report
強レーザー場誘起イオン化の理論的評価法の開発と超高速分子ダイナミクスの実時間追跡
Project/Area Number |
06J05252
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅野 学 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電子ダイナミクス / 分子キラリティー / 芳香族分子 / 環電流 / レーザー制御 / 最適制御シミュレーション / 国際情報交換 / ドイツ |
Research Abstract |
アキラル芳香族分子に円偏光レーザーパルスを照射してπ電子の芳香環に沿った回転を誘起できることが容易に理解される。この場合、π電子の回転方向は円偏光レーザーパルスの偏光軸の回転方向により一意に決定される。これに対し、採用第1年度目において、直線偏光レーザーパルスを照射してキラル芳香族分子のπ電子が芳香環に沿って回転することを示した。直線偏光レーザーパルスによって制御されたπ電子の回転方向を決定する因子を明らかにするために、採用第2年度目においてキラル芳香族分子におけるπ電子回転の最適制御シミュレーションを行った。最適制御理論は、目的とする終状態へ量子系を遷移させる最適制御パルスを設計する数学的手法である。与えられた拘束条件の下で目的の終状態を生成する最適なレーザー波形を探索する最適制御理論は、π電子回転を効率良く制御するのに必要なレーザー変数を調べる上で非常に有用な手法である。キラル芳香族分子は光学許容の擬縮退π電子励起状態の組を持つ。この擬縮退状態の線形結合は、π電子回転の角運動量演算子lの近似的固有状態|+>と|->を与える。|+>または|->の一方を光によって選択的に生成すれば、π電子は芳香環を反時計回りまたは時計回りに回転する。そこで、我々は2,5-Dichloro[n](3,6)pyrazinophane(DCP)のR異性体を対象とし、制御の終時刻における|+>または|->の収率を最大にする直線偏光レーザーパルスを最適制御理論に基づいて設計した。得られた最適制御パルスは擬縮退状態に共鳴する2色レーザーであった。また、主要3準位(電子基底状態と擬縮退状態)で電子波束を展開したときのモデル解析から、(1)この2色レーザーの相対光学位相がπ電子の回転方向を決定すること、(2)2色レーザーのピーク強度が大きい場合でもπ電子回転の角運動量を高次の摂動論的解析解によって予測できること、を示した。
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