2006 Fiscal Year Annual Research Report
ラセンピッチを段階的に変化させたヘリセンの合成と機能
Project/Area Number |
06J05271
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高平 祐介 東北大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヘリセン / 1,12-ジメチルベンゾ[c]フェナントレン / 非平面π電子系 / 1,8-二置換ナフタレン / Diels-Alder反応 / 温度可変^1H NMR / ラセミ化 / 活性化自由エネルギー |
Research Abstract |
本来平面構造の芳香族化合物が置換基の立体障害によりねじれた非平面構造をとるものがヘリセンである.多環芳香族化合物の例がよく知られており,室温でも熱的に安定な化合物でベンゼン環の数が少ないものとしては当研究室で取り上げている4環性の1,12-ジメチルベンゾ[c]フェナントレンがある.私はベンゼン環の数のより少ないヘリセンに着目した.これはねじれた非平面π電子系の性質を理解するのに適していると考えたからである.これまでに1,8-位に嵩高い置換基を有するナフタレンが不斉を持つことが知られているので,今回私は数種の1,8-二置換ナフタレン誘導体を合成し,その性質を1,12-ジメチルベンゾ回フェナントレン誘導体と比べることにした. ベンザインとフランとのDiels-Alder反応を鍵反応として,レゾルシノールから6工程で1,8-ジ(tert-ブチル)-5-メトキシナフタレン-4-オールを収率よく合成した.温度可変^1H NMR実験を行い,ラセミ化の活性化自由エネルギーを約80-90kJ/molと算出した.(5)-(+)-ケトピン酸との縮合によりジアステレオマーに誘導し,-20℃以下では分割可能であるが,室温ではラセミ化が速いことを明らかにした. 次に,tert-ブチル基をアダマンチル基に置き換えた1,8-ジアダマンチル-5-メトキシナフタレン-4-オールを合成した.(S)-(+)-ケトピン酸エステルにすることでジアステレオマーを分割することに成功し,X線単結晶構造解析によって絶対配置を決定した.本化合物は室温ではラセミ化せず,ラセミ化の活性化自由エネルギーは約100kJ/molと算出された.1,8-位置換基の剛直性を向上させることにより,ナフタレン環の反転を抑制できたと考えている.
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Research Products
(1 results)