Research Abstract |
微小流路内に電気化学反応を利用して,タンパク質や細胞の接着を誘導する電気化学バイオリングラフィー技術を集積化したバイオチップの開発に独自の取り組みを行った.特徴として,アレイ化に関する一連の操作を擬似生理条件下において行うことが可能であるため,従来法と比較して乾燥に起因するタンパク質・細胞の変性を軽減することが期待できる.まず,上記の電気化学バイオリングラフィー技術と負の誘電泳動技術を組み合わせて行うことで,微量の細胞を微小流路の特定の位置に配置・固定する手法を考案した.次に,抗体を流路内に局所固定化することにより,抗体の特異的認識を利用して血液中の特定の白血球を捕捉し,血球細胞診断チップへの応用を図った.極めて煩雑な操作が必要な白血球の形態観察を,微小流路チップを用いることで迅速かつ簡便に実行可能であることを確認した.さらに,微小流路内に固定された培養細胞を,流速を制御することによって回収する研究に取り組み,微小流路内に瞬間的に早い流速を作用させることで,ほぼ100%の細胞の回収を達成した.本研究によって,微小流路を完全に組み立てた後の半閉鎖的な流路内において,細胞を集めて固定し回収する操作を可能とした.また,実用化を念頭に,微小流路チップに水晶振動子マイクロバランス(QCM)を組み込み,抗原抗体反応のリアルタイム,ラペルフリー測定を行った.電気化学バイオリングラフィーを利用し,流路内に複数種類のタンパク質を固定することによって,タンパク質の親和性の評価に関する応用を確認した.実際に,上述した操作が可能な試作機の作製を行い,実用化につながる重要な成果が得られた.
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