2006 Fiscal Year Annual Research Report
イオンチャネルに拮抗作用するポリエーテル分子の全合成と活性構造の解明
Project/Area Number |
06J05327
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海老根 真琴 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機合成化学 / 天然物化学 / 生物活性分子 |
Research Abstract |
今年度、フロリダの赤潮原因渦鞭毛藻Karenia brevisより単離・構造決定された5環性のポリエーテル化合物、ブレベナールの世界初の全合成を、当研究室で開発した「鈴木-宮浦反応を用いた収束的なポリエーテル骨格構築法」に基づく戦略で達成し、その提出構造を改訂すると同時に絶対立体配置の決定にも成功した。 ブレベナールの左右の両側鎖は、二重結合が多数存在し化学的に不安定であることが予想されたため、合成の終盤で導入することとし、まずは5環性ポリエーテル骨格の構築を目指した。その5環性ポリエーテル骨格は、真ん中のC環で切断してAB環およびDE環フラグメントに分割し、それぞれを効率よく立体選択的に合成したのちに、当研究室の不破らが開発した鈴木-宮浦反応により連結を行い、最後にC環を構築するという戦略で合成することとした。そのような計画で研究を進めた結果、提出構造式を全合成したが、その化合物のNMRスペクトルは天然物と一致せず、しかしMSスペクトルは一致した。これらのデータに加え、ポリエーテル化合物の生合成仮説などの知見を交え種々検討した結果、真の構造はC26位メチル基の立体化学が逆である化合物ではないかと推測できた。そこで次に、提出構造式の全合成と同様にC26位ジアステレオマーの合成を行った。その結果、各種NMRスペクトルおよびMSスペクトルは天然物と一致し、ここにブレベナールの全合成を達成すると共に真の相対立体配置を明らかにした。また、旋光度も天然物と一致したことから、ブレベナールの絶対立体配置の決定も行うことが出来た(J.Am.Chem.Soc.2006,128,9648-9650.およびJ.Am.Chem.Soc.2006,128,16989-16999.参照)。現在は構造活性相関研究を指向し、より短段階で効率的に合成可能なルートを検索中である。
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