Research Abstract |
本研究の目的は,青年期における対人恐怖心性の基礎的研究および臨床的応用について検討することである。そして,主眼としては対人恐怖を捉える上で欠かせない概念である自己愛との相互関係性を吟味することによって,より詳細な対人恐怖に対する実証的知見を積み重ねることで健常青年の精神的健康維持に必要な予防的対策の提案と,臨床的な意味における対人恐怖の治療応用性について言及することにある。 まず,対人恐怖心性と自己愛傾向の探索的検討により,この両概念は2つの独立した変数にて扱うことが妥当であることが明らかにされており,新たな対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデルの開発がなされている。この内容については,パーソナリティ研究・心理学研究にて掲載されている。 また,この2次元モデルから導出される5類型についての具体的な人間像を詳細に検討する必要性から,各類型に特徴的なパーソナリティ特性・認知的構造・ストレス過程・自我同一性の様相について質問紙調査を実施した。 具体的には,以下の4研究を行った。1.対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデル尺度(以下,TSNS),FFPQ短縮版(パーソナリティ特性),心理的ストレス反応尺度(以下,SRS-18)を大学生に施行し,5類型の人格的特性と精神的健康の関係を検討した。2.TSNS,完全主義傾向尺度,ネガティブな反すう尺度,自己関係づけ尺度,不合理な信念尺度を大学生に施行し,5類型に特有な認知的構造を検討した。3.TSNS,ストレッサー尺度,認知的評価尺度,ストレスコーピング尺度,SRS-18を大学生に施行し,5類型の適応的・不適応的なストレス過程を検討した。4.TSNS,多次元自我同一性尺度(MEIS),SRS-18を大学生に施行し,5類型の自我同一性の様相と精神的健康の関連を検討した。
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