Research Abstract |
私は,人間の時間認識を決定する意識的・無意識的プロセスを解明することを目的とし,これまで2つの観点で実験研究を行い,新たな知見を示す結果を残している。第1に,意識的プロセスの重要なファクターである,選択的注意を取り上げ,時間知覚に与える選択的注意の影響を調べた。具体的には,特定の視覚刺激に対して選択的注意を向けることによって,実際には同じ呈示時間であるにも関わらず,知覚される時間が伸縮するか否かを調べ,時間知覚に影響を与える選択的注意の要因を特定した。第2に,瞬き中の時間知覚を調べるために,視覚刺激が消えている時間(空白時間)の知覚に焦点を当て,空白時間の知覚に与える視覚的大きさの影響を調べた。具体的には,視覚刺激を一瞬消し,その空白時間の前後の視覚刺激の大きさを変えることによって,実際には同じ空白時間であるにも関わらず,知覚される空白時間が伸縮するか否かを調べ,空白時間の知覚に視覚的大きさが影響を与えることをはじめて明らかにした。これまでの研究成果をもとに,平成18年度は,海外の雑誌に3本の論文が採択された。学会等における研究発表に関しては,国際発表を1回,国内発表を5回(うち口頭発表2回)行い,日本基礎心理学会第25回大会(広島大学)で優秀発表賞,日本認知心理学会第4回大会(中京大学)で優秀発表賞(技術性評価部門)を受賞した。 その他に,本年度は,人間の時間認識に与える速度知覚の影響を調べる研究を行った。この研究では,これまで異なった領域で研究されてきた時間認識と速度知覚の関係を調べ,我々が感じる時間が視覚刺激の運動によって伸縮することを明らかにした。この研究成果はVision Sciences Society,日本基礎心理学会,あるいは日本認知心理学会で発表するとともに,認知,知覚関係の専門誌に投稿する。
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