2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世南都寺院圏における空間および歴史認識と、その叙述様式に関する文献資料学的研究
Project/Area Number |
06J05393
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大橋 直義 青山学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 『建久御巡礼記』 / 興福寺 / 南都 / 縁起 / 巡礼記 |
Research Abstract |
本年は既に提出した研究計画の1年目の内容にそくして、南都諸寺の縁起テキストについての調査分析を行った。ただ、その成果は未だ公刊しえていないが、平成19年度以後、逐次学会に紹介し、また分析をすすめていく予定である。そのなかでも代表的なものをいくつか掲出しておくと、まず、大谷大学図書館に蔵される、室町後期写の『興福寺縁起』を検討した。これは、私が主たる研究対象にすえている『建久御巡礼記』と類似する縁起言説を持ちながら、興福寺西金堂の修二月会の縁起説たらんと改変をおこなった一本で、南都圏における縁起言説の変容を見る上で極めて重要なものと位置づけられる。さらに、日本大学総合学術情報センター蔵『興福寺流記』を新たに発見、現在も調査検討をすすめている段階である。この一本は、大日本仏教全書におさめられる同名書とは異なり、興福寺の縁起言説を広く収録するもので、学会に知られることはなかった一本であり、同時に、この一本が、教王護国寺(東寺)という京洛の真言寺院を介している点、すでに紹介した同センター蔵『後鳥羽院御順礼記』とあわせて、京洛真言寺院における南都縁起説の重要という点で意義深い発見であると考える。なお『建久御巡礼記』に関しては、この書の注釈書を刊行すべく、鋭意準備をすすめている段階であることも付け加えておく。 そのほか、歴史叙述の様相という観点から、「鎌倉・室町の書物と書写活動」および「『平家物語』と民間伝承」の二本の論考を公表した(ただし現段階では校正段階である)。
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