2006 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害児の自発行動に影響をおよぼす概日リズム中枢機構の解明
Project/Area Number |
06J05421
|
Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
中村 渉 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 神経科学部門, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 概日リズム / 視交叉上核 / 下室傍領域 / Clock変異マウス |
Research Abstract |
初年度のアプローチとして自由行動下マウスの概日リズム中枢・視床下部視交叉上核神経活動リズムを継続的にリアルタイム記録する実験系を確立した。 1)視交叉上核の概日行動制御 マウスにおいて、視交叉上核は日中の活発な発火により行動リズムを制御していた。恒常暗環境においてもこの神経活動リズムは継続し、それに駆動される行動リズムも継続する。夜間の環境光入力は視交叉上核神経細胞の発火頻度を上昇させ、それに伴い神経活動リズム、行動リズムともにリズム位相変位を引き起こした。環境光条件を強制的に6時間シフトさせると光条件と行動リズムの間に乖離が生じ、いわゆる"時差ぼけ"状態を呈する。時差ぼけを生じているマウスの視交叉上核は行動と逆転した位相関係を保った神経活動リズムを発振し、時差ぼけ下でもリズム制御は視交叉上核が担っていることが示唆された。 2)視交叉上核の出力経路 視交叉上核と関連する出力経路として下室傍領域を同定した。下室傍領域は視交叉上核の背側部から視床下部室傍核に至る第三脳室周辺部で定義される部位であり、視交叉上核の出力中継部となっている。この領域の神経発火頻度は夜間に上昇し、視交叉上核とは負の相関を示す。相関関係は逆に行動との正の相関として表されるが、行動に時差ぼけを引き起こした場合、行動よりも視交叉上核との相関関係を継続した。このことから視交叉上核-下室傍領域系が概日リズム制御機構の最上流に位置すること、光環境条件との乖離が生じた場合行動を修飾制御機構がその下流に存在することが示唆される。 3)Clock変異マウスの概日行動制御 リズム障害モデルとしてClock変異マウスを用い、その概日リズム出力機構を調べた。行動リズムにおいて通常光環境条件下、恒常暗条件下、時差ぼけ条件下ともに野生型と比較して明瞭な差異が認められ視交叉上核-下室傍領域系のリズム制御機構を明らかにした。
|