2008 Fiscal Year Annual Research Report
外場応答性フォトニック結晶による蛍光物質の励起状態の制御
Project/Area Number |
06J05453
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
久保 祥一 Tokyo Institute of Technology, 資源化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | アゾベンゼン / 液晶 / 高分子 / 過渡吸収 / 外場応答性 / フォトニック結晶 |
Research Abstract |
アゾベンゼン誘導体を含む液晶材料は,光の照射によるトランス体とシス体との間の光異性化と,それに伴う配向変化や相転移によって,屈折率や光学的異方性などが大きく変化することが知られている。特に液晶高分子にアゾベンゼン部位が含まれる場合には,誘起された配向変化が長時間にわたって保持される点で,低分子と比べて利点がある。このようなアゾベンゼン液晶高分子は,フォトニック結晶との関連でも,屈折率変調による光学特性変化が期待できる。しかし,高分子フィルムにおいて,光を照射したあとにどのような過程を経て分子配向が変化するのかについては,測定の難しさなどのために,これまで詳細な検討がなされていなかった。これは,フィルム中では光照射により生成した異性体が残存するために,通常の溶液系のような積算による測定ができないためである。そこで,この問題を解決するため,パルス光照射ごとに試料の位置を自動ステージにより移動し,試料の様々な場所で測定した結果を積算する手法を考案し,過渡吸収スペクトルの測定を試みた。ホモジニアス配向した膜厚約200nmのアゾトラン液晶高分子について測定したところ,パルス光照射から数十ナノ秒の間に初期の配向の乱れが起こり,その後数マイクロ秒の緩和過程を経て終状態へ至るという,配向変化の過程を観測することができた。スペクトルの時間変化を詳しく検討した結果,光照射直後は,異性化によって生じたシス体が周辺にある分子の面外方向へ配向変化を誘起し,その後,再び面内へ配向が緩和するものの,初期状態と比べて配向が乱れた状態として残ることが分かった。このような配向過程の追跡はこれまでに例がなく,光応答材料としてのアゾベンゼン液晶高分子の特性を検討する上で重要な知見を与えると考えている。
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Research Products
(2 results)