2007 Fiscal Year Annual Research Report
X線分光による超新星残骸の系統的研究と核γ線撮像観測を目指した多層膜望遠鏡の開発
Project/Area Number |
06J05557
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡田 俊策 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線 / すざく衛星 / 激変星 / X線望遠鏡 |
Research Abstract |
今年度は、2005年度に打ち上げられた「すざく」衛星に搭載されているX線望遠鏡の軌上較正試験を昨年に引き続き行ってきた。また、Ia型超新星爆発を引き起こす元となる激変星の研究を行った。激変星は主星である白色矮星と伴星である晩期型星の近接連星系である。伴星のロッシュローブを流れ出た物質は白色矮星の周りに降着円盤を形成し、徐々に中心へと降着していく。降着円盤と白色矮星表面の間の境界層と呼ばれる領域からは高エネルギーX線が発せられているが、そこには高温プラズマが存在していると考えられている。しかし、その温度分布や幾何学について全く情報が無く、物質降着の最後の現場に関する理解が十分ではなかった。そこで今回、アメリカのChandra衛星と日本のすざく衛星を用いて、典型的な激変星であるSS CygをX線観測し、上記の高温プラズマの物理状態を観測的に明らかにする研究を行った。SS Cygは静穏時と、可視光で静穏時の40倍以上明るくなるアウトバースト期と呼ばれる2つの異なった状態を遷移して輝いているが、その2つの状態におけるプラズマの構造をスペクトル解析により詳しく調査した。その結果、静穏時ではプラズマはアウトバースト時よりも約20keVと高温で、さらに境界層に存在しているが、アウトバースト時ではプラズマは約6keVと低温で境界層よりも大きく広がっていることが初めて明らかになった。この結果に加え、アウトバースト時での降着円盤は白色矮星表面(〜4000km)にまで達しており、高温プラズマは降着円盤のすぐ上方に存在し、白色矮星の周りに1000km/s程度でケプラー回転していることまでも観測的に明らかになった。このことは過去に予想されていた理論予想を支持するだけでなく、理論では予想出来なかった新たな知見を提供する結果となった。以上の成果は私の博士論文としてまとめられている。
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Research Products
(7 results)