2006 Fiscal Year Annual Research Report
イソロイシンtRNAのコドン特異性・アミノ酸特異性を決定する機構の構造的基盤
Project/Area Number |
06J05669
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中西 孝太郎 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 翻訳機構 / RNA / 核酸結合タンパク質 |
Research Abstract |
TilS・tRNA^<Ile>_2複合体 本研究の開始当初,研究員は1つの生物種において,TilSとイソロイシンtRNA(tRNA^<Ile>_2)の複合体の結晶を得えていた.以前研究員らは,TilSがtRNA^<Ile>_2のアンチコドン1文字目をATPでアデニリル化した後にL-リジンを付加する機構モデルを提唱しており,今回得られた結晶はATPの存在下でのみで得られることから,tRNA^<Ile>_2がアデニリル化された状態であると考えている,これらの結晶を大型放射光施設のシンクロトロン放射光を利用することで約6Åまでの回折像を収集することができた.しかし,このデータでは本研究の目的を達成することはできない.これまでに研究員は,10以上の生物種からTilSの遺伝子をクローニングし,発現・精製を行ってきた.そのうちtRNA^<Ile>_2との結晶化の過程に進むことができた生物種は4つであった.TilSの精製が難しい理由としては,常に高濃度の塩存在下でないとTilSが沈殿してしまうなどタンパク質としての性質が不安定である理由が考えられる.現在は,ゲノムプロジェクトが終了した生物種で菌株が入手可能な3種についてゲノム調製を行い,TilSの遺伝子をクローニングして組換えタンパク質の発現系を構築している.これらの生物種のTilS組換えタンパク質を精製し,結晶化を試みる. MetRS・tRNA^<Met>_m複合体の結晶構造から明らかになったこと また研究員は,MetRSのアンチコドン認識を他のクラスIaアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)と比較するため,クラスIaの各aaRS・tRNA複合体の結晶構造をクラスIaに共通な(α-helix bundleドメインで重ね合わせた.その結果,イソロイシルtRNA合成酵素(IleRS)とバリルtRNA合成酵素(ValRS)はアンチコドン2文字目を同じ様に認識しており,その方法はMetRSがスタッキングとワトソン・クリック様水素結合でアンチコドン1文字目のシチジンを認識する方法に似ていた.MetRSはクラスIa aaRSの中で最も古い酵素と考えられており,MetRSはアンチコドン3文字をすべて認識するが,IleRSは1,2文字目,ValRSは2,3文字目を認識する.このことから,研究員は,恐らくIleRSとValRSの共通祖先はMetRSがアンチコドン1文字目を認識する方法を踏襲してアンチコドン2文字目を認識することで,アンチコドン1,3文字目を認識する方法に進化の余地ができたのではないかと考えた.よってMetRS内のいくつかの残基をValRSのアンチコドン2文字目の認識に関わるアミノ酸残基と同じになるように置換すれば,そのMetRS変異体はValRSと同じような方法で2文字目を認識すると予想した.そこで,実際にそのようなMetRS変異体を調製したところ,その変異体は野生型tRNA^<Met>よりもtRNA^<Met>(C34G)をアミノアシル化するようになった.現在,この進化の仮説を確かめるため,このMetRS変異体とtRNA^<Met>(C34G)の複合体の結晶化を始めている.
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