2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J05703
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
保科 拓也 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | チタン酸バリウム / サイズ効果 / ナノ粒子 / 格子振動解析 / 結晶構造解析 / 誘電特性 / 強誘電体 |
Research Abstract |
本研究は,チタン酸バリウム(BaTiO_3)ナノ粒子の誘電特性が粒子サイズによって変化する現象,いわゆるサイズ効果を解明するために行なった。まず,シュウ酸塩の2段階熱分解法という方法によって,不純物や欠陥濃度が極めて低いBaTiO_3ナノ粒子を作製し,誘電率の粒子サイズ依存性について検討した。その結果,粒子径140nm付近で比誘電率が約5,000という極大値を示すことを見出した。この起源を明らかにするために,高輝度放射光X線回折を用いて,合成したナノ粒子の結晶構造を解析し,粒子サイズと温度に関する相図を作成した。BaTiO_3の強誘電性がサイズ効果により消失する臨界径は約30nmと決定することができ,同粒子径は誘電率の極大を与える粒子径(140nm)とは異なったことから,誘電率極大の原因が,粒子サイズにともなう正方晶から立方晶への相転移現象では説明できないことが明らかとなった。また,THz領域におけるナノ粒子誘電特性評価システムの開発を行ない,BaTiO_3ナノ粒子の格子振動解析を行なった。その結果,BaTiO_3のソフトモードであるSlaterモードの振動数が粒子径140nm付近において極小値を示すことが明らかとなった。すなわち,粒子径140nm付近で誘電率が極大を示す原因は,結晶内ポテンシャルの平坦化によるイオン分極の増大であることがわかった。さらに,BaTiO_3粒子の表面付近のナノ構造に対しての精密な結晶構造解析を行なった。その結果,BaTiO_3ナノ粒子が内部正方晶層,格子歪の傾斜層,表面立方晶層の3層で構成されることが明らかになった。BaTiO_3ナノ粒子の誘電率のサイズ依存性はこのような複合構造に基づいて説明できる可能性が高く,今後,誘電率と複合構造の関係を明らかにしていくことにより,サイズ効果が解明できると考えられる。
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Research Products
(3 results)