2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J05804
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
張 康瑜 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 結び目 / 結び目同境 / crosscap数 / 種数 / 同境crosscap数 / 4次元種数 / Khovanovホモロジー |
Research Abstract |
今年度は、結び目同境理論を中心に研究を行なった。特に、Khovanovホモロジーやその一般化であるKhovanov-Rozanskyホモロジー、さらにknot Floerホモロジーなどのいわゆる多項式不変量のカテゴリー化の、結び目同境への応用を視野に入れて、様々な考察を行なった。 S1×IからS3×Iへの埋め込みが存在し、その埋め込みがKOをS3×{0}の中に、-K1をS3×{1}の中にそれぞれ移すとき、二つの結び目KOとK1は結び目同境であるという。結び目同境は同値関係である。私は、昨年度、ある結び目の結び目同境類における最小のcrosscap数のことを同境crosscap数と定義した。ここで、crosscap数とは結び目がS3の中で張る向き付けられない曲面の最小1次元Betti数のことである。 同境crosscap数に関する研究結果について、ドイツ(Oberwolfach研究所)、カナダ(Banff 数学研究所)、デンマーク(オーフス大学)での研究集会で多くの数学者の前で発表を行った。その結果、J.Birman氏、K.Orr氏のような世界的な結び目理論研究者が私の仕事に興味を持ち、他の研究者とも有益な情報交換を行うことができた。 結び目と向き付けられる曲面の関係については、種数、4次元種数、同境種数などが知られており、多くの研究者によって研究されているが、同境crosscap数のような、向き付けられない曲面に関する研究はほとんどない。 向き付けられない曲面に関連して、結び目の4次元clasp数、および4次元crosscap 数に関する研究も行なった。結び目の4次元clasp数とは、R4の中で穴あき円板によって結び目とつなぐことができるHopf絡み目の最小数である。4次元clasp数は4次元crosscap数以上であることが,村上と安原によって示されている。また、4次元crosscap数は前述の同境crosscap数以下であることもわかる(私は、一般には等号が成り立たないことを示した)。これらの不変量の相互関係、また具体的な結び目に関してこれらの不変量を決定することは興味深く困難な問題である。 私は、近年発見された結び目の新しい不変量であるKhovanovホモロジーを利用して、4次元clasp数の研究を行うという発想に基づいて、Hopf絡み目のKhovanovホモロジーから結び目のKhovanovホモロジーへの準同型写像を考察した。まだ、新しい結果を出るには至っていないが、Khovanovホモロジーを始めとする新たな結び目不変量(Khovanov-Rozansky不変量、knot Floerホモロジーなどいわゆる多項式不変量のカテゴリー化)についての論文を勉強するなど積極的に取り組んでいる。
|