2006 Fiscal Year Annual Research Report
栄養増殖サイクル脱出に伴うエピジェネティック制御の解析
Project/Area Number |
06J05846
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
加藤 太陽 島根大学, 生物資源科学部, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 分裂酵母 / エピジェネティクス / 細胞周期 / 分子生物学 / ゲノム |
Research Abstract |
分裂酵母のゲノム上に散在するシス配列spCRE(S.pombe cAMP responsible element)は、それを認識するbZIP転写因子であるAtf1/Pcr1ヘテロダイマーを介して、ストレス応答、細胞周期のG1停止、組換え活性に影響を与える。それだけでなく、サイレントな高次クロマチン構造であるヘテロクロマチン中に存在するspCREは、やはりAtf1/Pcr1を介してヘテロクロマチンの構築に関わる。このような背景のもと、本研究はAtf1/Pcr1による染色体ドメインの制御とG1停止の仕組みの解明を目指している。 分裂酵母ゲノム上に存在するspCREを検索したところ、209カ所の推定spCREが見つかり、その49%は遺伝子間領域(IGR)に存在していた。これらの推定spCREを含むIGRの多くはkbオーダーであり、分裂酵母の平均的なIGRに比べると非常に長かった。Atf1-FLAGとPcr1-FLAGを用いた網羅的なクロマチン免疫沈降解析を行った結果、主にIGRに位置する推定spCRE配列に、Atf1-FLAGとPcr1-FLAGがヘテロダイマーとして分布している事が示唆された。これらの一部は、Atf1/Pcr1依存的に活性化されることで知られる遺伝子の上流に位置していた。加えて、第3染色体のセントロメア領域に見つかった推定spCRE配列にもAtf1-FLAGとPcr1-FLAGが局在しており、この領域のヘテロクロマチン形成に貢献している可能性が伺われた。また、生細胞の蛍光観察によれば、Atf1-GFPとPcr1-GFPの核内シグナルの強度は窒素源枯渇後に大きく変化しなかった。 一方で我々は、分裂酵母の胞子がマルトースを糖源として発芽する能力に乏しいことを発見し、Atf1とPcr1が分泌型マルターゼの制御を通してマルトース代謝に重要な役割をもつ事を示唆する結果を得た。また、Gad8とTor1もマルトース代謝に関わることが判明した。これらの因子はすべてG1停止に関わる因子であるため、G1停止とマルトース代謝の制御機構に共通のメカニズムが存在することが示唆される。
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