2007 Fiscal Year Annual Research Report
栄養増殖サイクル脱出に伴うエピジェネティック制御の解析
Project/Area Number |
06J05846
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
加藤 太陽 Shimane University, 生物資源科学部, 特別研究員(SPD)
|
Keywords | 分裂酵母 / エピジェネティクス / 細胞周期 / 分子生物学 / ゲノム |
Research Abstract |
分裂酵母のゲノム上に散在するspCRE(S.pombe cAMP responsible element)配列は、それを認識するAtf1/Pcr1ヘテロダイマーを介して、ストレス応答、細胞周期のG1停止、組換え活性に影響を与える。また、ヘテロクロマチン中に存在するspCREは、やはりAtf1/Pcr1を介してヘテロクロマチンの構築に関わる。本研究では、このような背景のもと、Atf1/Pcr1が如何にして環境変化への応答に貢献するのかを解析している。 本年度は、分泌型マルターゼをコードするagl1遺伝子がAtf1/Pcr1依存的に発現誘導されることを確認した。興味深いことにAtf1/Pcr1が結合するspCREコンセンサス配列はagl1遺伝子上流の遺伝子間領域に存在せず、12kb上流のspCREもagl1遺伝子の発現誘導に必要なかった。加えて、agl1周辺の多くの遺伝子がAtf1/Pcr1依存的に誘導され、この遺伝子群の発現制御にAtf1/Pcr1が貢献することが明らかとなった。また、agl1遺伝子の誘導へのGad8とTor1の貢献も判明した。 糖源変更後、agl1遺伝子の転写ユニットに結合するRNAポリメラーゼIIの量が上昇し、同時にその領域のヒストンH3の量が減り、プロモーター領域においてメディエーター複合体の結合量が増加した。これは出芽酵母の誘導型遺伝子と同様であり、転写制御の普遍性が伺われる。興味深いことに、転写誘導時、Atf1/Pcr1はagl1遺伝子の転写ユニット全体に結合した。このことは、転写因子が必ずしも標的遺伝子の直ぐ上流に結合する必要がないというエン八ンサーモデルを彷彿させるだけでなく、DNA配列に依存しない形で転写因子が標的と相互作用する機構の存在を示唆しており非常に興味深い。おそらく遠く離れた制御エレメントにAtf1/Pcr1が配列依存的に結合しており、そのエレメントと標的が空間的に相互作用する形で転写伸張が制御されると思われる。免疫染色解析によればRNAポリメラーゼIIは核膜直下のあたりに局在していたが、Atf1/Pcr1は核質の中央にも存在していた。今後、Atf1/Pcr1とその標的遺伝子が核内配置のレベルでどの様に制御されて転写の場を形成するのか解明したいと考えている。
|
Research Products
(4 results)