2006 Fiscal Year Annual Research Report
フランス近現代思想における身体論(科学・芸術・政治との関連から見たその展開)
Project/Area Number |
06J05877
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
藤田 尚志 法政大学, 文学部, (PD)特別研究員
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Keywords | ベルクソン / フランス近現代思想 / 身体論 / リズム / 場所 / 目的論 / 生気論 / 情動 |
Research Abstract |
フランス近現代思想における身体論の展開を、科学・芸術・政治との関連から検討しようとする本研究は、第一年目に予定通り資料調査・分析を終え、予定以上の成果を挙げることができた。裏面「11.研究発表(平成18年度の研究成果)」で詳述するとおり、論文6本である。以下、各論文の内容を適宜要約しつつ、本研究全体との関連・位置づけを述べる(便宜上、上から順に1,2とする)。 まず手始めに、フランスの近代と現代の境目にいる代表的な哲学者アンリ・ベルクソンの身体論を集中的に取り上げることが望ましいように思われた。その中心的な特徴として(イ)固有身体の脱固有化、(ロ)知覚と行動の相互浸透、(ハ)技術の問題への積極的な注目、の三つを指摘し、フランス近代思想において重要な位置を占めるフランス唯心論との対比を明確にするよう努めだ(2)。次に、ベルクソンの四大著作それぞれから一つずつ鍵となるように思われる目立たぬ準概念に注目してみだ。処女作『意識の直接与件に関する試論』からは持続のリズムと拍-これはまだ芸術・美学の観点を導入することでもある-、すなわち数と計測の問題を取り上げ、リズムとしての主体が身体と絡み合っだ形で浮き出す様を分析した(1)。第二作『物質と記憶』からは記憶の場所、すなわち現象と知覚/幻覚の問題を取り上げ、場所としての主体が身体と分かだれることなくせり出してくる様を分析し、第三作『創造的進化』からは生命の方向性、すなわち生気論と目的論の関係を取り上げ-これはまだ科学の観点を導入することでもある---、方向=意味(sens)としての主体が身体と緊密な連関を持つて現れてくる様を分析した(6)。最終作『道徳と宗教の二源泉』からは情動の呼びかけ、すなわち共同体と熱狂の問題を取り上げ-これはまた政治の観点を導入することでもある-、情動としての主体が身体を通して衝き動かされる様を分析した(3)。こうして本年は、ベルクソンの身体論を、科学・芸術・政治の観点を導入しつつ分析しだわけである。 最後に強調しておきたいが、人文科学系では外国語で発表を行なうことがいっそう難しいにもかかわらず、それを積極的に奨励する制度的支援が十分に行なわれているとは言えない現状にあって、ドイツ語からフランス語への翻訳とその解説の刊行(4、5)を始めフランス語で4本を刊行した(近刊予定を含む)。
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Research Products
(6 results)